ゴーストアビリティーとは ②
連れてこられた場所は、祖父母の部屋。この部屋は、私が小さい頃から立ち入りを禁止されていた場所。
初めて中に入ってみた感想。それは、あまりにも暗すぎる。よく中も見えないな、なんて。
「華ちゃん、これ。」
「…なに、これ。」
それは、私も知らぬ、先祖からのゴーストアビリティーの記録だった。毎日依頼してくる人の個人情報を集め、何回目なのか。それが記してあった。
あ、だから手帳が必要なんだ。書いておかないと、忘れるから。
一人で自己解決して、その記録に目を通した。
「華ちゃん。」
「ん…?」
「私の昔話、少しだけ聞いてくれる?」
祖母はそう言って、口を開いた。
・・
私が大体17歳くらいの頃。私はゴーストアビリティーに選ばれた。
当時の私は何が何だか分からなかったけど、自分からそれを受け入れた。
「紫。あなたなら、できるから。」
私の母からそう指名された。
ゴーストアビリティーは昔から、女性しかなれない決まりがあった。そのためか、先祖の次の代から女の子に執着をし始めた。
私は現に長女だけど、3番目の末っ子。
それくらい、女の子が大事にされて来た世界だった。
その1週間後。
『初めまして、紫さん。』
「えっと、」
『黒木美奈子です。あなたのパートナーにならせてもらいます。』
「えっと、黒沢紫、です。」
私たちはゴーストアビリティーの契約を交わした。
この時、私たちはもう死ぬまで一緒、というのが記されてしまった。もう、離れられないの。
でも、その契約基準も最近変わったみたいなんだけど。
『紫さん、そろそろお客様が。』
「そうですね、行きましょうか。」
しばらくは、二人で十分なほどやって来たつもり。だけど、そんなことも長くは続かなくて。
まわりが結婚し始めて、私もそろそろ結婚を、って考え始めたの。
そんな時に、ある方が依頼しに来た。
それが、おじいちゃん。
「会いたい人が、いるんです。」
「はい、どなたですか?」
それから私たちは一緒に過ごすことが増えた。それと同時にいつの間にか、恋に落ちてたの。
そして、三年後。華ちゃんのお母さんが生まれて。
お母さんが15歳の時。おじいちゃんが言ったの。
「紫、二回目を使わせてくれないかな。」
「え、」
「この前亡くなった、私の母に会いたい。」
こんなこと言われてしまったら、使うしかないでしょう?
私はおじいちゃんを連れて、お義母さんに会わせたわ。
「午前3時までに帰ってくるのよ。これだけは守って。」
午前3時。この時間を過ぎてしまえば、依頼して来た人も、彼らと一緒に消えてしまう。
それだけはどうしても避けたかった。
でも……
「お母さん、お父さんは?」
おじいちゃんは帰ってこなかった。あれほどダメ、と言ったのにも関わらず、帰らぬ人となった。
私はそこから体調を崩して、眠り続けた。まるで、眠り姫みたいに。
そこで感じてしまったの。あぁ、私ここまでだな、って。
だから
「雅。次はあなたよ。」
お母さんに、雅に託した。
その後の雅は、私以上の活躍をしてくれた。私だったら断ってしまうような難題も、彼女はやり遂げた。
ある意味、正解だったのかもしれない。