親友の悲劇 ②
「泉!」
「華…」
近くにいたのは、泉のお姉さんである、歩。二人の前にいるのは、冷たく横になっている両親。
ほら、当たった。泉と華と凛でゴーストアビリティーの話をしていた時、泉の身内に何かが起こるって。
この状況は、泉の両親が亡くなったんだ。泉と歩を残して。
泣きじゃくっている泉に、冷静に泉を落ち着かせようとする歩。
この状況を見て、私と華に何をしろと? 何をすればいい。まともに依頼さえ受けていないし、勝手に動けないんだよ、こっちは。
「おばさんとおじさんは…」
「交通事故だった。横断歩道を渡ろうとしたら、信号無視の車と…」
泉と逆で、静かに涙を流す歩。
泣きたいのに、泉を落ち着かせるために、不安にさせないために、泣けないんだ。どれだけ我慢して来たのだろう。
「泉、華ちゃんとロビーにいて? すぐ行くから。」
「え…」
「行きなさい。」
「…はい。」
泉は黙って出て行こうとする。
『私はここで歩を見ている。』
そう言えば、華は小さく頷いて。泉の背中をさすりながら、姿を消した。
しばらくすると、歩が口を開いた。
「今日は…、今日は、結婚記念日だったのに…。そんな日に……! そんな日に、私と泉を置いていかないでよ…。置いてかないで…。」
大粒の涙をたくさん流して、冷たくなった両親を揺さぶる。
やっぱり、泣きたかったんじゃん。泣けばよかったのに。泉の前でも。大声で行かないでって、泣き叫べばよかったのに。
『人間はほんとにバカな生き物だ。感情に任せればいいのに、なんで…。』
少し泣いて、最後に「さよなら」と言って部屋を出た。
エレベーターを降りると、椅子に二人で腰を下ろしてる姿が見えた。
泉はまだ泣いていて、華はそれを慰めるようにハンカチを渡していた。
「泉、もう泣き止みな?」
「歩だって悲しくないの? もういないんだよ?」
「悲しいに決まってる。でも、次に進まないと…。」
必死で涙を堪えてる。感情のまま生きればいいのに。
「華ちゃん、ごめんね? 泉、帰るよ。」
「…うん。華、明日ね?」
『華、私は二人について行く。お前は手帳とペン、二人の個人情報を把握しておけ。』
「うん、わかった。」
華のセリフは泉と歩に対するもので、決して私のものじゃない。
だって、心の中で「なんで?」と言っているから。
だから、こう言ってやるんだ。
「二人はすぐここへやって来るから」と。