罪 ⑨
そんなことを考えていると、ガチャン、と玄関が開く音が聞こえた。華が帰って来たのだ。
時間切れ、というものだろう。
「帰って来たね」
「ただいまー」
私はここで何をしたらいいんだろう。このままでは華まで一緒に…。
段々力が抜けていくのが分かる。
「ただいま、ひなた…」
『今すぐ出て行け!』
「おかえり、黒沢華」
今のこの状況で、全然使えない頭をフル回転させて出てきた答え。それは華をこの場にいさせない事。
きっとこいつは私たちを巻き添えにして消えようとしている。そんなくだらないことに、華を死なせるなんて、私が持たない。
「どうして…」
「黒沢華、来い。来るんだ」
『来るんじゃない!』
「黙れ!」
華は恐る恐る私の隣にやって来る。でも前とは違う目をしていて。何かしら察して、何かを覚悟しているんだなって。こんなところで成長を感じてしまうんだ。
「ひーちゃん、終わりにしようか」
『それなら私と二人で…!』
「それじゃあ意味がないんだよ。分かるかな」
ニコニコしながら華を見てそう言うから。がくがくふるえている華を安心させるように、私はボソッと言ってやるんだ。
お前は消させない、生きていないといけない人間だから、と。
下を向いていた顔はパッと上がって、私を見て少しだけ笑っていた。
「ひーちゃんはこれで償ってよね」
それで僕の復讐が終わりを告げるんだ。
これで晴れるのなら、面白いものだな。華の手を後ろでつなぐと、あり得ないほど手汗をかいていて。
少し心が落ち着いてきた頃、目の前が光に覆われて、静かに目を閉じた。
「さよなら、ごめんね、ひーちゃん」
という声と共に。
「ねえ、ゴーストアビリティーって知ってる?」
「何それ知らない」
いつも通り明るい空の下でそんな話をしている人がいて。
「って、この話前にもしなかった?」
「確か3人でだよね」
3人で。そう言った後、何が何だか分からない顔をしていて。
まだまだ面白いことは残っている。
「誰だっけ…、あと一人」
「何見たの、怖いんだけど」
『これだから人間は』
「それがいいところなんだよ」
普通に生活して、生きていればそれだけできっと報われることがある。
もう二度とあなたと再会しませんように。