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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 5
179/180

罪 ⑧



「誰にでもいい顔して、そう言うところがむかつく」


『うん』


「お母さんやお父さんを殺したのもお前なんだろ!」


『それは違う!』



自分じゃないことを言われて、否定してはいけない事なんて何かあるんだろうか。

でも、それだけ自分のせいで苦しんでいる人がいると言うことを知ると、罪悪感でいっぱいになる。



「お前はここにいるだけでいろんな人を苦しめているんだ」


『それは…』


「罪を償え、黒木ひなた」



そう言った彼の目元には涙が浮かんでいた。大粒の涙だ。

彼の言葉の中に、たくさん私を苦しめる感情が込められていて。



『…結局はこかげの嫉妬よね。私が何でもできるから、私が全て難なくやって来たから』



びくっと肩を震わせて、私を睨みつけるこかげ。そんなこと、私は一回も思ったことはなかったけど、どうやら図星だったみたい。

それを考えると、こんなことに華や楓まで巻き込んだことに、すごく罪悪感を感じた。それでも守りたい、なんて自己中心的な考えなのだろうか。



『それだけなら私だけに…』


「ひーちゃん。大切なものほど壊したくなるって、聞いたことないの?」



背筋が凍っていくのを感じた。

ああ、だから華が狙われたのか。全て私のせいか。最初から認めておけばよかったのか。

そう思った瞬間にふと顔を上げると、こかげはニコニコしながら私を見つめていた。

その瞳から逃れるように視線を窓に移すと、買い物袋を持った華の姿。



「そろそろ黒沢華も帰宅かな」


『華には手を…!』


「何言ってんの。ひーちゃんも、黒沢華も消えるんだよ」



笑顔でそんなこと言うから。私は覚悟して、玄関の方に向かうこかげの腕をつかんだ。



「離せ」


『行かせない』



もはや兄弟喧嘩なんてものではくくれない。ガタンガタンと色んなものが床に散らばっていく。

全身を壁に打ち付けられ、投げ飛ばされていく。

もう少しだけ、ほんの少しだけ時間を延ばせたら。華に危害なんて行かないのに。



「離せと言っているだろう!」



怒れば怒るほど柑橘の匂いはきつくなっていく。吐きそうになるのを押さえ、こかげの腕をつかむ。



「ねえ、そんなことしても守れないの、分かってる?」


『え…?』


「はは、簡単に腕離しちゃってさ」



冷静になると、ジンジンと全身に痛みが走る。

私はどうしたらいいのだろう。今ここで一体何が出来ると言うのだろう。

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