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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 5
177/180

罪 ⑥


美しく、羽ばたけなかった鳥のように。

願っても願っても生えなかった翼みたいに。



『用がないなら帰れ』


「あるよ」



こーんなにたくさん!

この一部分を切り取れば、可愛らしく、愛くるしい青年だと思える。でも私は、そんな表情でさえうざったるくてしょうがないんだ。



『何の用だ』


「ゴーストアビリティー、僕にも使わせてよ」


『何を言って…』


「会いたいんだ、黒木ひなたに」



私の胸をグサグサと刺さっていく言葉の矢。また当時の感情と記憶がフラッシュバックし始める。これがやって来ると、私の感情は制御不能になる。



『何のために私と会おうとしてるんだ!』


「何のためって、決まってるじゃん。復讐だよ、復讐」



復讐。私がこいつに何をしたと言うんだ。私の頭の上には?が浮かびだす。

疑問はどんどん表れるわけで。私は頭に残る記憶を遡ったが、その理由は分からなかった。



「はは、分からない顔してる」


『何もしていないじゃないか、私は…』


「これだから自分のことしか考えられないやつは…」



これでもか、と言うほど目を見開いて私を睨みつける。私でも肩をびくっと震わせるほどの目つき。その中でふわっと香る華とは違う柑橘の香り。



『この香り…っ!』


「大嫌いな香りに包まれてどう?」



私を言葉で精神的に追い詰めていく。視覚、嗅覚、聴覚で私を責める。自然と流れる涙なんて、私は気がついていない。



「確か、ひーちゃんが死んだ時もこの香りだったよね」



気持ちが悪くなってしゃがみ込んだ私の付近に来て、上から私を見下ろす。まるで自分がこの世界の支配者とでも言うように。

近くなればなるほど、どんどんきつくなるこの香りに、もっと吐き気がしてくる。



「どーしたの?気持ち悪い?」


『向こうに…!』


「嫌だね」



だって、ひーちゃんが苦しそうにしてる姿って、すっごく魅力的で面白いから。

狂っている。人が苦しそうにしている姿を見て魅力的だの、面白いだの、そんなものを見出すなんて。人として終わっている。

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