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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 5
176/180

罪 ⑤



「…ん?どうした?」


『別に』


「もう何?」



笑いながらそういう華を見つめながら、私も少しだけ、ほんの少しだけ口元を緩めた。

私は時計の針がカチカチと動く音を聞きながら、また視線を窓の外に戻す。ある自分が私の目に入って、私は思わず血の気が引いた。



「ひなた?」


『華、今日の夜ご飯は何だ?』


「何が食べたい?」



ニコニコしながら楽しそうに話す華の声を聞きながら、私はそいつから目が離せなかった。



『…肉じゃが』


「肉じゃがね!材料買ってこなきゃいけないや」


『…準備してこい』



今だけでも出て行ってくれればいい。このままでは華にまで危害が出る。悔いのないようにしなさい、その言葉はこういうことなのか。

私の背筋が凍っていくのを感じる。



「じゃあひなた、留守番任せたよ!」


『ああ、行ってらっしゃい』



少しの時間稼ぎ。華がいないうちに。そう考えている私の全てを知っているように、後ろから声がかかる。



「黒沢華を逃がして」


『お前…』



紛れもないあいつだった。何も変わらないその姿。その瞳は完ぺきに黒に染まって、もう逃げられなくなっていた。

あの場所から、あの世界から、過去の自分から。



「何しに来たの、とでも言いたげだね」


『ああ、思っている』



何か危険なことが起こる。誰も死なせてはいけない。

あの紫さんの言葉は、このことだったのか。こいつが、翡翠が私のもとにやって来るから。

華が、楓が、ここにいなくてよかった。犠牲は私一人で十分。そう感じて。



「黒沢華に話があったのに」


『よくも敵陣地に入ってこれたものだ』


「だって、僕たち家族じゃん?ひーちゃん」


『その名で私を呼ぶな!』



ひーちゃん。

頭の中に出て来たあの悪夢の延長戦。幼かったあいつが、こかげが今目の前にいる。私を殺したあいつが。敵と化したこかげが、睨みつけるような目つきで私を見つめる。

私が最後に見たあの景色のようだ。

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