罪 ④
気分も悪くなるほどの曇り空。雲が多く、太陽が隠れてしまっている。
私は窓際のソファーに腰かけて、外を見つめた。
「ひなた、レモネード入ったよ」
『ああ、ありがとう』
華が入れてくれたレモネードを受け取って、ただただ見つめていた。
きっとこれがボーっとしているということなんだろう。
「ひなた、お菓子は?」
『いらない』
全て一言で返すから、やっと理解したのか、それとも察したのか、何も言わなくなった。
静かに隣のソファーに座って、読書をし始める。
何処かでこの景色見たことあるなあ、なんて。ずっと静かなまま。ただただ雲が流れて、見えない風が吹いていく。
何時間くらいそのままでいたんだろう。呼吸する音と、本をめくる音だけがその場に響く。
『もう読み終わったのか』
「うん、次の本取ってくるところ」
そう言って華は立ち上がる。それと同時にふわっとめくれ上がるスカートと、香ってくる柑橘の匂い。思わず私は口元が緩んだ。
「どうしたの、ひなた」
『別に』
そろそろなのかな、なんて思いながら、また窓の外を見るんだ。
何があるとか、何かがいるとか、そういうのはないけど、興味が湧いた。ただそれだけ。
段々雲がよけて行って、太陽が見えてくる。眩しいほどの太陽の光が、家の中にも差し込んでくる。
「太陽出て来たね」
『そうだな』
2人して、お互いを見ずにそんな会話を交わす。どんどん明るくなる外を見ながら、人がたくさん歩いてくるのを感じた。少しずつ冷めていくレモネードを机に置いて、ゆっくりと華の方を見た。