罪 ①
シャンデリアの光がゆらゆら動くのを感じて、目を開いた。
いつも通りの黒いカーテンに光る炎と、明かり。昔のことを夢で見たようだ。寝た気が一切しない。
黒木ひなたが消える、あの場面が出て来た。今までこんなことなかったのに。
少し嫌な予感をしつつ、体を起こす。
「翡翠様?」
「…どうされた」
何をボーっとされているのですか。
そう言われるまで気がつかなかった。自分がボーっとしていたなんて。
きっと考えすぎなんだろう。と思いながら、静かに部屋を出た。
長さが全く違うろうそくが並ぶ中で、炎が色んな方向に向いている。ゆらゆらと揺れながら。
『翡翠様…?』
「そなたに話がある」
小さな体をこっちに向けて、僕の目を見て離さない。決して揺るがないその瞳は、僕の方が吸い込まれそうになるほどだ。
『何でしょうか』
「そなたに座を譲ろう」
廊下の真ん中で、自分たちしかいないこの空間で、そんな話をするのだ。
君なら、鳳なら、この世界をさらに新しいものにしてくれるだろう。そう信じたい。
もしかしたら、黒沢家、黒木家までもを滅ぼしてくれるかもしれない。そんな期待も込めて。
『譲るって…』
「僕のろうそくを見てごらん」
鳳に近かった、一番太く、大きいこのろうそくは僕の、翡翠の命だ。
段々短く、そろそろ燃え尽きそうだ。
それを見て、鳳は僕を二度見する。何を言いたいかは分かっている。だが何一つ言わせない。
『どうして…』
僕はそう言った鳳の口を閉ざした。これ以上は何も言わせないように。
「それ以上は何も喋るな」
それでも何かを話したいような鳳を見つつも、僕は何も触れない。ずっと唇を振るえさせて、納得がいかない顔をしているのだ。
その顔、どこか面白い。僕の興奮材料となりそうだ。
『あの!』
「まだ何かあるのか」
意を決したような表情でそう言ってくるから。あーあ、僕の好きな表情を見せてくれるのはあの一瞬だけか。
どこかがっかりしている自分がいて。