ひなたとこかげ ④
〈ゴーストアビリティーは女の人限定〉
〈そろそろいいお年頃じゃ…?〉
母が死んだのは、ゴーストアビリティーになるため。そう思うとどこか納得してしまった。
じゃあ、父は?ただの巻き添えだったんだろうか?
私の心は複雑な感情で支配される。
「ひーちゃん、お勉強分からない…」
「…じゃあ、一緒にやろうか」
何で私は母親の代わりをしているんだろうか。私の役目なんかじゃないのに。なんでやるべき人がいなくなるんだろう。
私の毎日は全て壊された。生活も全てボロボロ。全て、不満で包まれていた。
「ひーちゃん、すごい!」
ちょっとしたことで笑えるこかげが羨ましくて。私とは正反対だな、なんて。
きっとこの子の人生はこれから楽しいものになるはずで。私のような暗い人生は絶対に送らない。だって「男の子」だから。
そう考え始めるとこかげもこかげで察したのか、私の元から段々離れるようになった。
「なんでこうもうまくいかないかなあ…」
疲れたのか、一人になりたくて。休みたいから。こかげが昼寝をしているのを見て、本を持って樹木の方へ足を進めた。
昔より少し明るくなったこの風景。どこか懐かしいと感じる私もいて。周りを見渡せば小さい頃の自分と動いているこかげがいる。実際に動いているみたいに。幻覚なのは分かっているんだけど、だけど昔の感情が込み上げてきて涙が出そうになる。
本を閉じて樹木から降りると、ちょうどいい風が吹いて私の足元を通り抜けた。