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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 5
166/180

ひなたとこかげ ③



「ひなた」


「ちゃんと100点よ。何か文句でも?」



まるで女王様みたいに、何もかも上から見下してやった。最初から出来ていれば、怒らなくて済むのに。いつしかそう言われたからだ。100点取って、課題も全て終わらせて突きつけて、その場から逃げるかのように去った。もちろんたどり着く場所は、あの樹木だ。



「ひーちゃん!」


「遊んでたの?」


「うん!」



すると陰から見ていたお手伝いさんがこかげに近づく。



「坊ちゃん、彼女に近づいてはなりません。向こうで遊びましょう」



ああ、そういうこと。こかげからなんてひどい。

この一件で私は家からも、学校からも、みんなから避けられるようになった。

生きている心地がしない。私って本当に生きてるの?

そう疑問に思うほど、みんな無視するから。いっそのこと早く死んで、そのゴーストアビリティーとやらの仕事に就こうかな、なんて。

真面目に考えていた。そう思えば思うほど、その意思が強くなって。



「ひなたちゃん」



どこか優しい声がした。それと同時にどこか聞いたことのある声がして。心に沁み込んで、涙が溢れる。泣く気なんて全くなかったのに、どんどん溢れてくるのだ。なんて不思議なことだろう。



「ひなたちゃんにはまだ早いわ。もう少し生きなさい」



後ろから声がするのに、どうしても振り向けなかった。こんなに涙でぐしゃぐしゃな顔を見られたくなかったから。いや、怖かったから。顔を見るのが。何を言われるのか分からなくて、分からなすぎて。心の覚悟をして後ろを振り向くと、誰もいなかった。

もう少し生きなさい。

私の心に矢のように刺さった。生きたくない、とどれだけ願っても生きなくてはいけない。そう実感したのだ。


こかげが8歳の頃。父と母が心中した。

父が包丁で刺され、母はその横で首を吊っていた。まだ若いこかげを置いて行くなんて。どうして私が。私に苦労を掛けようとしてるの。

そんなことを考えすぎて、怒りに狂った。全て「、そうとしか思えなくて。



「ひーちゃん?」


「しばらく私と二人暮らしだね、こかげ」


「ママとパパは?」



事実は言えなかった。全て嘘でカバーして。しばらく接してこなかったからか、どうやって接して、どうやってこかげと話をすればいいのか分からない。

8歳と20歳。こんなに年が離れている中で、どうやって距離を詰めよう。

日々頭を抱えていた。

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