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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 5
165/180

ひなたとこかげ ②



「ねえひーちゃん!ボール!」


「…ボール?うん、いいよ」



こかげが羨ましくてしょうがなかった。両親共にこかげのことを可愛がって。ある意味嫉妬してたんだと思う。

ポンポン飛んでいくボールを見ながら、私はそんな自分に嫌気がさしていた。でも、こかげのその笑顔に何回も救われてきた。そんなことを考えていると、縁側から声を掛けられる。



「ひなた!」



ああ、時間切れ。これから地獄の時間が始まる。そう思うと胃が痛んだ。



「もうボールおしまい?」


「うん、ごめんね。ひーちゃんやらないといけないことがあるんだ。だから終わりに出来るかな?」


「うん!」



えらい子ね、なんてこかげの頭を撫でる。私には撫でてくれないの。優しくもしてくれないの。私とこかげの差は何なんだろう。

散々いい点を取りなさい、とかあなたは跡取りなんだから、とか。後から思い知った。これが「女と男」の違いなんだって。

私は唇を噛んで、こかげと母の隣を駆け抜けていった。



「うわ、ひなたどうした?」


「…なんでもない」



涙なんて見せてはいけません。あなたは強くありなさい。

理想をこっちにまで押し付けるな。私の中で全ての限界を超えた。もう止められないし、止まらない。

涙でぐしゃぐしゃのまま、私は家を飛び出した。行く当てもないのに。私はどこに行ったらいいんだろう。よくよく考えれば、私には友達と呼べる人すらいない。



「どうしたら…」



そのまま家に戻るしかなかった。大人しく、何もせず。



「何してるの!」



また怒られるのがオチだよね。私はストレス発散の道具じゃないんだよ。

ちゃんと心もあって、考えだってあるのに。私はどうしたらこかげのように可愛がってもらえるのだろう。考えても考えても答えは出なかった。



「家出て、散歩してきただけよ。それだけで怒られなきゃいけないの?」


「私は心配して…」


「それはご近所さんもいるから?」



わざわざ近所の人を巻き込んでまで言うことかな。そんな母親みたいな顔しないでよ。こういう時にだけ。

この日、私の全てが変わった気がする。性格も、顔だちですらも。

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