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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 5
163/180

まぶしい光 ⑨


”ひなた ”


”ひーちゃん ”


急に現れた声にびっくりして、思わず手が滑る。



「ひなた!」


『あ…』



気がつくとスカートも含め、私の近くが全体的にびしゃびしゃになっている。白いじゅうたんのここは、綺麗に黄色くしみになっている。



「ひなた、けがしてない?」


『…ああ、ごめん』



近くに散らばったコップの破片をゆっくりと拾い上げていく。バラバラに散ったガラスは、一瞬だけど何かを映した。全然読み取れなかったけど。



「ひなた、そこは危ないから、そっち側行きな?」



ガムテープでガラスをペタペタと集めて、ごみ箱に捨てていく。

あの声が聞こえた瞬間、私の中で何かが弾けて、頭が真っ白になった。もう何も考えられなくて、何をしたいのかも分からない。

私が私じゃなくなっていく、というのはこういうことなんだって、全てが動きを止めたように感じた。



『私…』


「ひなたはひなただから。気にしなくていいよ」



その声が、その言葉が、その瞳が全て私を捉えていた。私の心の中にすっと入って来て、ゆっくりと染みる。どこか心地よくて、安心する。

ああ、この声が、黒沢華が、私の居場所だ、なんて。



『…レモネード』


「うん、作り直すから待ってて」



後始末を終えた華は、また立ち上がる。

こう言うところは母親譲りなんだな、と実感する。

今、この姿を雅さんが見たらどう思うんだろうか。何を感じるんだろう。もし、今私のこの姿を母が見たら、何を思って何を感じるのか、怖くて考えることもしたくない。

…できない子ね、なんて思うのだろうか。

そんな思いは誰にも伝わらないように、心の中に封じ込めた。



「はい、どうぞ」


『ありがと…』



どこにも行き場のない私の思いは、誰にも伝わらなくていい。私だけが知っていればいい。

華も、私が守れればそれでいい。だから、何もありませんように。



これから正直何が起こるか分からない。誰も失わせてはいけない。私が救わないといけない。

そう思うとどこか気が重くて。そんな時に現れたのがあいつだった。

敵ながら思ったことは「お前は、私たちのまぶしいほどの光だ」

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