まぶしい光 ⑥
「からすって、何でついたんですか?」
『翼が黒かったから…』
ひなたと楓ちゃんに置いてかれてから、しばらく沈黙が続いていた。
ずっと気になっていた疑問。からすという名は可愛いし、いい名前だとは思うけど、どうしてその名になったのか。からすみたいに腹黒くはないと思うし、どうしてなのだろう。
そう思うと、口から出ていた。
「今はもうグレーですね」
『そうですね』
こうやって話をすると、悪い人だとは思えない。この人と話していると、全てが謎に包まれている。
どうして、なんで、全て聞きたくなる。
「飲み物、何が好きですか…?」
『飲み物…?』
ああ、飲んだことないのかな。待って、そうなるとどうやって生きてたの。
疑問が重なる。とりあえず、なんてひなたに最初に渡したココアを入れた。
「はい、どうぞ」
『…ありがとうございます』
まだ抜けない敬語に、少し違和感を感じながらも、どこか気まずい笑顔で返す。
まるで、楓ちゃんみたいだなあ、なんて考えながら。
「味、大丈夫ですか?」
『…甘い』
ぼそっと呟いた言葉。でも興味津々にそのココアを口に含む。本当に少しだけど、彼が笑った気がした。それだけ気に入ってくれたんだな、って思うと私も口元が緩む。
「…なんですか』
「いや、何でもないです」
顔は整っている。イケメンだ。これは好きになるチャンスってやつなのかしら…。
そんなことを思っていると、後ろからバコン!と頭を叩かれる。
「いった…」
『そんなこと考えているから、彼氏ができないんだろ』
「え、ひなた!」
私の頭に綺麗に痛さを広げたのは、やはりひなただった。