愛してるの意味 ⑥
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あの日から約3週間。情報を集めるのに苦労していた。どこを探しても出てこない。情報は、楓の幼き記憶だけ。
それを元に探し求める。
『華、銀行に行け。』
「なんで。」
『強盗が現れる。中島杏子のところだ。』
いちょう銀行。多くの大金がそこに運ばれ、多くの人々がそこを利用する。それを知っときながら、強盗に入る人はすごいと思う。
そう思いながら、楓と華と共に走る。
楓はあの日以来、私たちの家に出入りし始めた。今の場所が居心地がいいんだろう。
「ひなた、来たけどどうするの。」
『通帳から、千円だけ引き出すんだ。』
「わかった。」
楓はまだ15歳のため、通帳を持っていない。だから華が今引き出している。
すると、黒づくめの男が入ってくる。
『楓、覚悟しろよ。』
「もとから、覚悟してます。」
「おまたせ。」
3人揃って、ソファーに腰をかける。
ふかふかなその座り心地とは真逆に、その男は銃を向け、お金を要求、そして客全員の手足をロープでしばった。
「我慢して。」
「そのつもりです。」
『私は見えないから楽だな。』
笑ってそう言ってやる。しばらくして、楓とその男が目を合わせた。
私はそいつの行動を読もうとした。
……え、読めない? どうして……。
こんなこと、今までの中で初めての出来事だった。
「お前、来い。」
「え……」
「楓ちゃん、気をつけて。」
「来い。」
やばいかもしれない。桜と同じ道を辿らせることはしたくない。
どうか、無事に……。
「久しぶりだな。」
「え、」
『そんなこと、言える立場なの?』
そう言って私は楓に向けられている銃を取り上げる。でも、みんなからは見えないから、銃が浮いているように見えるわけで。
「いい加減にして。」
「あ…?」
「私を殺しておいて、お姉ちゃんまで殺そうとするつもり?」
「楓ちゃん……?」
楓じゃない。これは、桜だ。
まさかとは思うが、憑依、した……?
このままだと、楓の命が危ない。
「桜、今すぐ楓の体から出ろ!」
「殺すなんて、許さない。もう、殺させない。」
桜は、男の目をじっと見つめて離さない。そんな時、パトカーの音がした。
やっと来たか、警察。全く動きが遅い。
「楓ちゃん!」
「華さん…」
「大丈夫だ。意識はある。きっと、安心して力が抜けたんだろう。」