まぶしい光 ④
『失礼します、来ましたよ。紫さん』
『失礼します、黒木ひなたです』
「失礼します、山田…楓です」
まだ楓は慣れないらしい。普通の家に比べると、こんな緊張感を味わうことはまずないだろう。この家が特殊だから。
「いらっしゃい」
目の前に座ることさえ、気まずい。正座をして見つめる紫さんの威圧感にやられそうだ。その瞳に見つめられるのがどうしても怖くて。
『今日は…、どのような…』
「ひなたちゃん」
最後まで言わせてもらえない。分かってはいたけど、どこかきつい。それに、私だけを見つめるから、怖い。
「あなた、はちみつの香りがするわ」
『はちみつ…?』
はちみつの香りで思ったのは、からすの存在だった。前もこのメンバーでいた時に香っていたのははちみつ。嫌な予感というものは当たってしまうのだろうか。
「風の噂で聞いたの。誰があなたたちの近くに…」
『彼は悪人ではありません。今の紫さんの言葉には語弊があります』
このことか。どこか納得してしまった。
華はまだ親しくないから。楓と私が一番近くにいたから。だから呼び出しを食らったのは私と楓だったんだ。
「それはまだ…」
『分かるんです。いた環境が悪かっただけ。人は見た目よりも中身ですよ』
『ひーちゃん』
やばいことを言ってしまっているのも分かっている。でも、どうしてもそのまま言わしておくのが嫌だった。
いい人なのに。どうしてここまで言われなくてはならないのか。
「ひなたちゃん」
『まだ、何かあるんですか』
私たちもそろそろ足の限界を迎える。できるのなら、早く終わらせて、早く華の元に帰りたい。
「これから何かが起きる。あなたは全員を守り抜くことができる?」
『紫さん』
「考えてごらんなさい。誰も死なせないで」
『え…』
考える時間は少なかった。知らないうちに紫さんはその場からいなくなっていて。
私が考えても考えても、答えは出てこなかった。