表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 5
154/180

名前のない怪物 ⑧



『…戻りたい、です』


「どこに。何しに。何のために」



瞳孔が開いて、目で殺される。そう思うほどだった。これ以上何も言ってはいけない。

自分の中でそう叫んでいる。



『抜けさせて…、ください…』


「それは、自分を消してくれって?」



今までにないほど楽しそうに笑っている。こんなに表情がコロコロ変わるのは初めて見た。

何が楽しいんだろう。ここには愛も何もない。



「今、お前が抜けても、誰も必要としない」


『…っ、いるんです!何人か!』



必要としてくれる人はいる。この人だけに執着しなくても、真紅たちといなくても、自分は必要とされている。

もう、自分があの人たちの場所を壊しちゃいけないんだ。温めて、普通に暮らす、それを叶えてあげないと。



「それが黒木ひなたと黒沢華か」


『あの人たちは思っているのと違う!』



あのときの気持ちが鮮明に蘇ってくる。

そろそろやばい、と思った頃。



『抜けたい、って言ってるんだから好きにさせればいいのに』


「…やっぱり来たか」



呑気に座っていた。ソファーに。

この人の瞳は、恐怖に屈しない、そんな瞳をしていた。真似できないその威圧感に、こっちがびくっとするほど。



「よくもまあ敵の陣地に乗り込んできたな」


『そっとこそ、勝手に支配してくれちゃって』



そんな会話が行われている中、何もできずにその場に立っていた。



『精神的苦痛を与え、自分が生きている意味をなくさせ、静かに消す』


「そっちの方が楽しいだろう」



この人の楽しい、は狂っていることを知っている。全てのネジが一本ずつ消失しているんだ。

でも、まだ知らなかった。この二人がどんな関係なのかを。



『こいつはもらっていく』


「いつ騙して戻って来るか、分からないぞ」



その一言で黒木ひなたは一瞬肩をビクッとさせて、自分を見る。まだ信頼されていないんだ、って考えてしまう。



『こいつは絶対に裏切らない』


「その根拠は…」


『お前は知らなくていい』



黒木ひなたは俺の方に手を当てて、姿を消した。

静かに目を瞑って思ったこと。

それは、

「生まれ変わるよ、真紅、冷淡。さよなら。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ