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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 1
15/180

愛してるの意味 ⑤


室内でラテを飲んでる華の元に、後ろから影が近づく。よく見れば、楓ではないか。

桜との話が終わったのか。いや、終わったから来たのか。






「楓ちゃん。桜ちゃんとは話せた?」


「はい。ありがとうございました。」






深々とお辞儀をして、そう言う。しばらくして顔を上げて、華の目を凛々しく見つめる。


さらさらとした長い髪が、楓の耳にかかる。その瞬間、柚子の香りが広がって。

私の鼻をくすぐる。







「ひなた?」


「黒木さん、さっきはすいませんでした。」







楓が私の目を見て話している。


見えるのか? 私の姿が。


私は目を見開いて、楓の姿を見つめていた。







『お前、私の姿が見えるのか?』


「はい。声もしっかり聞こえています。」






柚子の香り。正直言って、私の嫌いな香りだ。

“ あの時 ” と同じだから。

その場には冷たい空気が流れている。誰も言葉を発しない、発しづらいその空気。嫌な予感がする。






「楓ちゃん、一つ聞いていいかな。」


「はい。」


「桜ちゃんが殺害された時の犯人って、もう捕まったのかな?」


「……まだです。」






四年経った今でも、捕まっていない。逃走し続ける、殺害した犯人。






『お前、何する気だ。』


「捕まえる、犯人を。」


「え、華さん本気ですか?」


「嘘なんて言わない。」





バカだ。そんな簡単じゃないのに。人の人生がかかってるんだ。それを、子供の勝手な行動で動かしていいものじゃない。

昔の私だな、華は。何を言ってるのか、私にはわかる。でも、決まりは決まりなんだ。勝手にするな、動くな。


そう言えたら、どんなに楽だろう。楽なんだろうか。






「私にも、その仕事手伝えますか?」


「え、」


『お前、何言ってるんだ?』





バカなことを言いだすものだ。それが普通の人間がすると、どれだけ体力を、生きるための力を使うのか知ってるのか。もしかしたら、死んでしまう可能性もあるんだぞ。


楓を危険にさらすことなんてできっこない。妹の分まで生きてほしいから。






「私は、華さんと黒木さんの役に立ちたい。」


『ダメだ。楓は生身の人間だ。死んでしまってもいいのか?』





黙り込んだ。


やっぱりそこはまだ怖いんだ。まだ、生きてたいんだ。

それならばそっちを優先すべきなのに。

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