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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 5
148/180

名前のない怪物 ②


幼い頃、自分は他と同じ世界を救う天使だと思っていた。羽の色も、瞳も、輪の色も同じ。どこも間違っていない。みんなと同じ。

何も悪いことはない、同じだけで安心。

そう思っていた。



『ハニエル、おいでなさい』


『どうされましたか、ミカエル様』



天使の時は、名前もあって、全ての人に、天使に愛情や平和を授けていた。

それくらい愛を大切にし、平和を求めていた自分。



『愛が足りない子がいるようですわ』


『わかりました。授けて参ります』



この時はまだ、何も分かっていなかった。今までの経験が仇となって、自滅するなんて。

綺麗な景色を、誰にも習っていない飛び方で、自由気ままに飛んで。

白い翼を羽ばたかせて、その子の元まで。

笑顔で溢れているこの世界が、自分の生きていく世界だとずっと思っていた。



『あなたに、愛を授けましょう』



この仕事が、自分の転職だと思い込んでいた。

たくさんの方々が愛と平和で溢れる表情は、自分の心も愛で満たしてくれる。

こんな幸せなことは、もう味わえない。そう思えるほどだった。



『あなた、はちみつの香りがする』


『え…?』



休憩がてら立ち寄った広場。泉が涌いて、雲の上の快適な場所。そっと着地して、羽をしまうと後ろから声をかけられる。彼女からは甘いメープルシロップの香りがした。



『あなたの名前は?』


『ハニエル。君は?』


『私は、リリス』



見た目はみんなと同じで美しい。

純粋にその姿を、自分のものにしたい、なんて欲が出てきた。

毎日毎日、時間があれば広場の方は足を運ぶ。

今までにない感情が芽生えていた。



『ハニエル』


『どうされましたか』



いつの間にか、仕事にも支障を切らし始めていた。

完璧にやっていたと思っていたはずのことも、どこか抜けていたり、完璧にできなくなっていた。



『ハニエル、どうしたの?』



“今日は元気がないみたい”


彼女はそう言った。元気がないみたい。今の自分は少し落ちているみたいだ。

いつものように笑うこともままならなくて、愛も平和も分けてあげることができない。

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