表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 5
147/180

名前のない怪物 ①


蝋燭が消えていく。長いものから短いものまで、様々なものがある中で、俺の蝋燭もそろそろ終わりを告げる。あぁ、そろそろだ、なんて感じる。

長い廊下を抜けて、外に出た。



「あら、からす外に行くの?」


『ああ。少しだけね』



仲間が消えていく恐怖は俺が一番分かっている。今までだって、きっとこれからも、消え続ける。

そんな気持ちを抱えながら、生者の世界へと足を踏み入れる。

この世界は不思議だ。何もかもが恐怖と不安に襲われ、安心というものは保証されていない。

人が交わっていく交差点の真ん中で、何を思うのだろう。



「何してんの、こんなところで」


『人間観察、というものだ』



高いビルの屋上で、たくさんの人々を見つめて、自分は何しているんだろう。

こんなことをするために、来たわけではないのに。



「そんなことして、楽しいの?」


『灯には分からないだろう』



人間のくせに。生きているくせに。

それぞれの力を見極めるには、なかなか難しいもの。面白いかどうかなんて、俺が決めればいい。

一人でそんなことを考えながら、屋上の端で座る。



「落ちるよ?そんなところに座って」


『大丈夫だ、飛ぶから』



生まれた時から羽がついていた俺は、怪物だった。

もともとこの生者の世界に生まれたわけではなく、ずっと邪悪な世界で生きてきた。

最初は白かった羽も、どんどん黒くなっていった。



「からすも大変だね」


『灯、お前も仲間は大切にしろよ』



ふと出てきた言葉がそれだった。大切に生きていけば、壊れることも、何もないのに。

何でだろう、胸が痛い。また、失うとは思わなかったからかな。



「からす?」



そんな声も聞かないまま、俺は空を飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ