冷たい雨 ⑤
からすと何時間外にいたんだろう。もう何時間過ぎたのか、自分でもわからない。
『あ…、雨…』
ぽつりぽつりと自分達の上に落ちてくる水滴。
冷たく、何かを浄化させるように。
土砂降りになってきて、ようやく正気に戻る。
『…早く、戻ろう』
いつもと全てが違うのは、自分でも分かっていた。でも、すぐには直せない。もやもやしているから。
何もかも終わらせてからじゃないと、元に戻れない。雨に打たれながらそんなことを考えている。
自分がここに来た意味ってなんだったのか。それすらも思い出せなくなっていた。
『あいつと、話しに行くの?』
『どうして』
『それこそ冷炭まで消えちゃう…』
消えない、という保証はついていない。今話しに行って、消される確率はほぼ100%だと思う。
でも、他のやつが消されて、滅びるよりかは。
今自分ができることを優先したい。
『俺は、嫌だよ』
建物の中に入るまで、ずっと自分を止め続ける。
消されるから。嫌だ。やめてよ。まだいてよ。
まだ消されるかはわからない。それに関しては行ってみないと分からないんだ。
止められるのは…
『自分しかいないんだ、からす』
『…っ、なんで…』
全てを問い詰めないといけない。あいつに全て聞かないと。そうしないと、自分の気が済まないから。
からすが呼び止める声を無視して、自分は姿を消した。