冷たい雨 ③
冷たい雨が降っている。というか、雨というよりみぞれだ。何を感じ取っているのだろう。空は、天気は、心情を受けて影響されやすいのだから。
「ひなたー?」
『何だ』
「楓ちゃん、そろそろ来るって」
雨なのにも関わらず、華のことが大好きなことで。
そんなことを呑気に考えながら、華の姿を見つめる。
「え、何?」
『別に。最近本読んでるとこ、見ないなって』
今まで読んでいた本は綺麗に並べられているものの、新しく追加された本はここしばらく見ていない。
「読む時間、最近作れてないから。ただそれだけ」
そんな話をしていると、扉が開く音が聞こえてバタバタとやって来る。
大体誰が来るかは予想出来ているけど。
『もうちょっと静かに来い、楓』
「冷たいなー、ひなたさん」
現れた楓は、いつもと同じように私と接して、華の元へいく。
普段着で現れた楓の姿は、どこか違う。
『そんなおしゃれして、どこか行くのか?』
「え?全然」
楓曰く、これが普通、らしい。
私たちが思うことと、こいつが思うことはやっぱり違くて。どこか納得いかないな、と思うこともあるが、いつもより違和感は増している。
ことっ、と置かれた華のティーカップの中身は、ミルクティー。
『嗅いだことのない香りがする』
「え、わかるの!?」
そんなにびっくりするような内容だっただろうか。
華は私の目を見て、驚いた表情をしている。
「実はね、ディンブラっていう茶葉を使ってみたの。どう?」
ディンブラの茶葉は、バラのような香りがするのが特徴で、クセがない茶葉。紅茶が好きな人なら、みんなが好き、と言うであろう。みんなに愛される、と言った方がいいのだろうか。
『いいんじゃないか?』
冷たい雨音が響く室内に、スーッと入って来る冷たい風。
やっぱり雨の音って、雨の日って、嫌いだな。私には合わないみたいだ。
1人でそんなことを考えながらレモネードを口に含んだ。