冷たい雨 ②
『なーに覗き見しちゃってんの?鳳くん』
『…いや、バカだなって思って』
鳳の下に仕える雪が消えた。次々と仲間が消えていく中で、やっぱりみんなして「次は自分が…」なんていう不安を抱えていた。
それは、自分も同じくで。
『ほら、早く戻りなよ』
『…はい』
これから何が起こるかわからないからね。きっとこうやって仲間が消えていくのは、あいつが1人で全てを終わらせようとしているから。
それは分かっているのに、どうしてだろうね。あいつの行動を止めることができない。
「…そこで何してるの、冷炭」
『お前こそ、また消したんだって?』
“それも、黒沢華の一番の身内を”
何を考えていて、これから何をしようとしているのか、自分には分かっている。その上で、こいつに質問を投げかけるんだ。
「…お前には関係ない」
そうか。
どこか納得してしまう自分がいた。廊下の端にある蝋燭を見て、あいつは一つの蝋燭を吹き消した。
数ある蝋燭の中で、どうしてあれだったのか。自分はその蝋燭を見て思わず血の気が引いてしまった。そして、逃げ出した。
「え…っ、冷炭!?」
その廊下を走り抜けている途中に、いろんな人に止まれ、と言われる。でも、あの場所で立ち止まりたくなかった。
今まで気にしてなかったけど、「そういう意味」だったなんて。
外に出てから気分が悪くなる。
『なんだ…っ、あれ…』
誰も拾わないこの声を、宙に投げた。
この広い広場で、自分は1人座って、息を整えていた。すると、そっと脳裏で浮かぶ景色。
すぐに分かった。自分の幼き記憶だと。でも今は、この記憶に飲み込まれてはいけない。
『冷炭?』
『うわっ…、びっくりした…』
冷たい汗をかいている自分にびっくりしながらも、一番は隣に急に現れたからすの存在。
真紅の相棒といっても過言ではないからすは、真紅がいなくなってから落ち込んだまま。
『真紅がいなくなって…、静か…』
『そうだな』
真紅がいなくなったこの世界で、やるべきことをやるだけなのに。いまいち前に進めない。
誰かがあいつを止めないと…。