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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 5
141/180

冷たい雨 ①



「律、と呼んだんだが?」


『え…?』



“僕が呼んだのは、そなたではなく、律だ”

彼は、明らかにそう言った。なんとも言えない感情に支配され、何も考えられなくなった。

私は、律で律じゃない。



「そなたは雪だ、律ではない」



そう言われると、何も言えない。

私のどこかで、私は律だ、と訴えている。

私の心を自制していくうちに、だんだん頭が痛くなって。



「黒沢華と出会って、どう思った」


『もう、出会いたくないと…』


「嘘をつくな。本心を言え」



いつもの瞳で、私を追い詰める。その瞳は、私を次期当主にしようとしたあの人と同じ。

思い出して、大粒の涙が瞳から溢れ出す。



『私は…』



華に、ごめんって。置いて、消えて、10歳という若さで当主にならせてごめんって。辛い思いさせてごめんねって。


“謝りたい”



「はあ…」



そう思った瞬間、前から聞こえたため息。私は一瞬でやばい、と感じ取った。

このままここにいたら、消される。逃げなくては。

私は唇を噛んだ。



『…部屋に戻ります』



何も言わない彼を横目に、その場から逃げようとする。扉の前まで来ると、急に足が動かなくなった。



「そんな簡単に逃すとでも?」



あぁ、私は来ちゃいけないところに踏み入ったのか。

今さら実感した。



『あの…』


「黒沢華に情を移したのか、黒沢律よ」


『私は別に…!』


「妹に責任転嫁して逃げたくせに。嫉妬に狂い、妹を見殺しにしたも同然ではないか」



何も言えなかった。それは事実と言ってもいい。

玲がいなくなったなら、私が次期当主になって華を守ればよかったんだ。

…でも、もう遅い。後悔しても戻れないのだから。

動けない私の肩に触れ、耳元でこう言うんだ。



「そんなそなたまでもが用無しになるとは思わなかったよ」



この一言が合図となり、私の肩を燃やしていく。



『熱い…!熱…っ!!』



私がどんどん灰となって消えていく。

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