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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 4
137/180

雪の華 ①


私は目を覚ました。どこかで見たことのある景色が目の前で広がる。

そこに現れるのは、3人の少女。



「華、何して遊ぶ?」


「玲と律は?」


「私はー…」



広いお屋敷で縁側の方に出て、姉妹と思われるこの3人は、子どもらしいことをしている。

どこか懐かしい部分もありながら、ほとんどは知らない。

…いや、きっと忘れたんだ。



「ねえ、かくれんぼしない?」


「いいね、それにしようか」


「鬼は律ね!」



そう言って逃げ始める二人の少女。ここに残ったこの子が、律、という名なんだろう。

黒髪を靡かせて、静かに本を閉じて立ち上がる。



「少しは私の意見も聞きなさいよ、華…」



そう言って、私のいる樹木の方へ近づいてくる。どこか嫌そうに数字を数え始める。

辺りは明るく快晴。その中で元気に遊ぶこの子達が、どこか眩しく見えて。目を逸らしたくなる。

数字を数え終えて、目を開いたこの子は辺りを見渡す。きっと、近くにいる、とでも思っているんだろう。



「玲ー、華ー」



必死に声を出して、見つけようとしているのかしら。見つかるはずなんて、ないのに。

そんなことを思ってしまう私は、もう染まってしまっているのだろうか。…そんなことはないはずなんだけど。

この景色は、まだ染まっていない、美しい白紙。

2人の少女を探すこの子は、近くの川まで走る。



「あ、玲見っけ」


「あ、見つかった」



川の畑のところに隠れていた1人の少女は見つかり、そこから出てくる。泥だらけになった足元をじっと見つめながらも、絶対に指図せずに歩く。ただ見つめるだけなの。

何も言わない。でも、気になるってことは潔癖症なのかもしれないわね。

そんな呑気なことを考えながら、私はその2人の後をついていく。小さな子供の後ろを。



「華は?」


「どこに隠れたんだろうね」



なんて、歩きながら華と呼ばれる女の子を探していて。きっとすぐに見つかるだろう、なんて思いながら後ろを歩いていた私は、そろそろ暗くなっているのに気がついた。

まだ明るかったのに、ここまで暗くなるのが早いなんて。私でもびっくりした。



「華ー!」



そろそろやばい、とでも思ったのか、前を歩いていた2人の少女は、声を大きくして華の名を呼ぶ。

これで見つからなかったら。

1人の少女がボソッと言った。その表情は血を失った、青ざめた死に際の人みたいで。



「華!かくれんぼは終わりだよ!」



そんな声、どこから出しているのかと思うほど、大きな声。もはや叫び声ではないか、と思ってしまう。

走って、走って、華の姿を探し求める。どこにいるか分からない近い子の姿を。

そんなとき、後ろから幼い声が聞こえた。



「もう、終わりなの?」


「華!」



この子が華か。妙に納得してしまう。どこか幼く、私にはない何かが、この子は持っている。

そう思うと、どこかムカムカしてきて。



「もう帰ろう」


「えー、もうちょっとやりたいよー…」


「明日にしよう、華」



静かに手を差し出して、手を繋ぐ。

真っ黒な背景に映る、3人の少女のシルエットはどこか神秘的で。

私は一歩引いて、その風景を見ていた。その中でやっぱり私はこの3人について行くことしか出来なくて。

ある門を目にして、1人がこう言うんだ。



「私たちもいつかはお母さんみたいになるのかな」


「きっとね」


「何がー?」


「…まだ華は知らなくていいんだよ」



優しい目をした少女がそう言う。

ゆっくりとその門を開き、中に入っていった。その門の近くにあった、表札に書かれていた名字は「黒沢」だった。

私はビクッとしながらも、その門をくぐった。

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