英国の訪問者 ⑥
『どうしても、ダメですか』
『今の私たちがあの子に会ったとしても…』
難しい。その一言だった。
今の私たちが。彼女たちはそう言って、会うのを拒否する。
会ってしまえば終わるんだ。面会する。ただそれだけなのに。二人の全てを、今のあいつに。
『あの子が、園田理人くんが。会いたいって、来たんです。あの子の願いを叶えてくれませんか』
今はそう言って頭を下げるしかない。
強引にいうよりも、丁寧に、ただただお願いするしか。
『黒木さん…』
お受けします。
そう聞こえた気がした。
会わせられる、楓と同じ状況のあいつに。そう思うと、感極まって目が潤う。
『なんで、泣いているんですか…!』
『ありがとうございます…』
これで、やっと。あいつの中の疑問が解けるんだ。
良かった。
その一言で。ずっと謎があるよりも、解決できるならそっちの方が断然いい。そう思うと嬉しくて。こんな気持ち、あるとは思わなかった。
嬉しい、って感じられて、感情を露わにすることすら滅多になかった私が。
サインをしてもらって、私はすぐに連絡を入れた。
連絡は次々と回って、あっという間だった。私が華の元に戻れば準備完了で。
「ひなた」
『もう来れるって?』
「ええ」
それからと言うもの、園田理人は、すぐ私たちの元へやって来た。汗だくになりながら。
「会えるって…」
「はい。交渉が取れました」
至って華は冷静に続けるんだ。
「覚悟はいいですか?」
私はその言葉を合図に全てのプログラム風景を変えた。驚いている園田理人を横目に、私は華の肩をトン、と叩いた。
「それでは、楽しいひと時を」