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英国の訪問者 ④
イギリスから来た彼は、いつもよりちょっと違うタイプのお客様だった。
状況としては、楓ちゃんとそっくりな部分も多々あって。幼い時からそういう体験をしてきたと思うと、どこか可哀想で。
きっとその一つの単語で括っていいものではないと思う。でも、すぐさま出てくるのはその言葉。
「華さん」
「あれ、ひなたは?」
「もう交渉に出かけました」
ボーッとしていると、いつの間にかいなくなっていたひなた。これに気づくのが、お客様が帰られた後でよかった。
そんなことを呑気に考えながら、私は冷め切った紅茶を口に含んだ。
「それにしても、ひなたさん遅いですね」
「そんな前に行ったの?」
「はい。ご両親に会いたい、という辺りからですかね」
結構序盤の序盤。そんな前から出て行って、まだ帰ってこない、って。あれからおよそ2時間は軽く経っている。私は少しずつ不安に支配され、胸が押し潰されそうになった。
「何か、手こずっているんですかね?」
「それだったらいいけど…」
その日はひなたが帰ってくることはなかった。