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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 4
132/180

英国の訪問者 ③


「お客さんです」


今日も導いてくる何かの縁は、切れていない。

ただ、今回の人はこれからも続くかもしれない、そんなことを直感で思った。



『華、お客だ』


「はい!今行きます!」



急にバタバタし出す華に、どこか冷ややかな目を向ける。手帳やら、筆箱やら、ガシャンガシャンと落としていく。挙げ句の果てには、自分も階段から落ちていく。



「大丈夫ですか…?」


「あ…、ありがとうございます…」



少し呆れた目で見る私と楓を横目に、見知らぬ男の人が手を差し出す。

華は少し照れたようにその手を受け取り、いつもより紅い顔に、熱を感じていた。



『あれは華、照れているな」


「ですね」



なんて話をしつつ、やっとリビングで二人とも落ち着く。楓がコト、とティーカップを置いて、後ろへ下がる。しばらく続いているこの沈黙を先に破ったのは華の方だった。



「今日は、どのようなご用件で?」


「あの…、これを見て…」



所々途切れつつ、用件を必死に伝えようとしている。でも、正直何を言っているのか聞き取りづらい。そう思っているのは少なくとも私だけではないはず。



「これ…、見たんです!」


「わざわざ、サイトから来てくれたんですか?」


「…はい!」



まるで犬。私はそう感じた。

一つ一つの言動が犬そっくり。私にだけなのだろうか、後ろに尻尾が見える。

ただ、どうしてわざわざ日本に来てまで…?



「会いたい人がいて…、イギリスから来ました」



さっきのやつで理解してもらえたことで、緊張がほぐれたのだろうか。最初の時とは全く違う。

表情も、口調も、別人みたいに。



「どなたに…?」


「僕の、母と父に」



その瞳の奥に感じた壮大な過去。まるで、楓が初めてここに来た時の瞳。

こいつも、とんでもない過去を持っているんだな、なんて一人冷や汗をかいた。

きっと、これは華も思ったことだろう。だからか、ただただ彼の言葉に耳を傾け、必死にメモを取る。



「ご両親、ですか?」


「はい。無理、でしょうか?」


「いえ、大丈夫です」



ここは、私の腕の見せ所。

願いを叶えるためなら、私は動こう。



『楓、私は先に動く。あとは任せた』


「…はい、いってらっしゃい」



私は楓に全てを任せて、その場を離れた。

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