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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 4
131/180

英国の訪問者 ②



「理人?」



ねえ、聞いてた?

そう言って僕を現実に連れ戻す。当時9歳の記憶はまだ残っていて、今も急に思い出す、あの景色。

綺麗に、鮮明に、見たままの景色が残っている。



「ごめん、もう一回説明してもらっていいかな」



仕事もままならない。

自分は、ここで何をしているんだろう。どうして、生きているんだろう。

一人、両親のことを思って、心を痛めた。

そんなある日。



「理人」


「どうした、エマ?」


「これ、見つけたの」



そう言って渡された、一つのサイトのコピー。

まるで夢のような話だった。



「これは?」


「理人がお母さんたちと話せるかも、って」



彼女なりの僕への配慮だと思う。

控えめに笑う彼女が、どこかあの時の母とリンクして。その紙を僕はじっと見つめた。



「理人、しっかりと話してきて。私はここで待ってるわ」



僕は、その言葉で何かが外れた。つなぎ止められていた何かがプツンと切れて、感情のままに、僕は動いていた。




どこか不思議な香り。私が嗅いだことのない、爽やかな。華さんとも、ひなたさんとも全然違う。

この香りが何に繋がるのか、私はそんなことを考えながらいつもの道を歩く。



「あの!」


「え、はい…」



見知らぬ人がトランクケース片手に私を引き止める。そこから微かに香る、あの匂い。

不思議な香りの正体はこれなんだな、と感じる。



「これって、どこ、ですか?」



渡された紙は、華さんたちのサイトのコピーだった。

きっとこの人は、誰かに会いたくて、わざわざコピーまでして、ここに来たんだ。

そう思うと、なんとも言えない気分になった。



「私、今からそこに行こうと思ってたんです」


「あなたも、依頼に…?」


「いえ、私の知り合いがやってて。よかったら一緒にどうですか?」



この人はいい人。直感でそう思った。

いつもより鼻が利いているらしい今日は、いろんな香りをたくさん吸収する。そのため、麻痺する鼻。そろそろ落ち着かせたいと感じる頃だった。



「華さん!」


『今日も来たのか』


「お客さんです」



私はそう言って、あの扉を開いた。

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