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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 4
129/180

紅の真実 ⑦



『真紅。』


「どうしたの、冷炭。珍しいじゃない、私のとこに来るなんて。」



昔のことをまた思い出して、頬を濡らしていた。どれだけ拭っても拭っても、大粒の涙として溢れる。



『泣いて、なにを思い出してたの。』


「それは、関係あるのかしら。あなたに。」

 


いつも以上に冷たく当たってしまう。

あの時みたいに少し心が揺らいでる部分もあったりして。そう思うと、また目を逸らしてキャンドルの炎が揺れてる姿を見つめた。



『真紅、何かやらかしたの。』


「なにもやらかしたつもりないわよ。どういうこと。」


『呼ばれてるから、翡翠様に。』



私の肩が震える。

何かやらかしたのかな。私は役に立たなかったのだろうか。

頭の中で浮かぶその不安。

ろうそくが並ぶ廊下を一人歩く。誰ともすれ違わず、不思議なほど静かなこの廊下を。ゆらっと揺れる炎を横目に、彼の部屋の前にたどり着く。



「真紅です、失礼します。」



彼の前ではしっかりと。礼儀正しくしていなければ、なにが起こるかわからないから。



「真紅か、どうされた。」


「こっちのセリフです。どうされましたか。」



彼の瞳は、相変わらず闇で包まれている。誰も気づかないほど、本当に微かなもので。

黒いもので統一されたこの部屋に光を灯すのは、大きなシャンデリア。私にしたらものすごく明るい光。その中で彼は、私をソファーに座らせる。



「最近はどうされている。」


「…最近は楽しく、充実してます。」



楽しく、充実してる。

この言葉が私に合ってるかは謎だけど、少なくともそんな生活だったらこんなに悩んではいないだろう。

そう思っていたことが顔に出ていたのか、前から視線を感じる。



「本当か…?」


「どんな言葉を期待なさってるんですか?」



そんな言葉が口から出ていた。思ってもないのに。

本能なのかしら、これは。

ふと上を向くと、シャンデリアがゆれている。しかし、目の前の翡翠様は笑っている。目、以外は。

やらかした。すぐに感じた冷気で足元が冷えていく。



「…すみません。」


「なにに謝っている? 悪いことなんぞ、していないだろう。」



その声は一段と低く、私の心を冷やした。鳥肌が止まらないこの部屋で、なにが続くのか。

ふと前を向くと、彼はこっちに手を差し出していた。



「手を。」



私はその一言で、手を差し出してしまったんだ。

それと同時に聞こえる、パチン、という音。あっという間に触れている手から、熱が注ぎ込む。



「熱…っ!!!!!!」


「このバカめ。」



その声と同時に、私の身体は灰となった。






全てを壊して、私は操り人形のように動いて、あなたのために動いてきたつもりだった。

なんでだろう、どこからだろう。きっとあの時、迷いなんてものを捨てて、黒沢雅と黒木さくらを消していれば。

憎む気持ちの中である一つの光。その正体は、「ごめんなさい」という言葉だった。

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