紅の真実 ④
『真紅。』
昔のことを思い出していたようだ。人間の醜い姿を見て、笑う惨めな自分。
今の私は一体何をしたいのだろう。
『何を考えているんだ?真紅は。』
『それは、俺にもわからない。』
ラベンダーとはちみつが混ざるこの空間で、一番匂いを悪化させているのはフローラル。私自身が、香りを汚くしている。
『行かなくていいの? 黒沢華の元へ。』
ゆらりゆらりと揺れる炎と、からすが座るロッキングチェアのキー、という音。
その中で私は、密かに炎を消した。
・・
最近の華は、頭を悩ませがち。全てにおいてしっぱいしている。
私にしたら日常茶飯事だが、楓からしたら別問題。
「どうしたんですか、あれ。」
『知らん。』
何があったかなんて、私が知るはずがない。
華のことを全て知っているとでも思ったら、大間違い。
…まあ、ある程度は知っているけど。
『華。』
「んー? 何、忙しい。」
『一回落ち着け。』
その瞬間、持っていた様々なプリントがばら撒かれる。そこに書かれていたのは、今までゴーストアビリティーを使用してきた人たちの名前。
『これ…、どうしたんだ。』
「私が担当してきた人たちの中で、何か共通点があるのかなって。」
" ない " とは言い切れない。
華がゴーストアビリティーとして活動をし始めてから、今まで以上に忙しくなった。
これまでは、私たちを使う人は年に数名。それが急に数十名と化したこの現状に、私が一番驚きを隠せない。
「でも、もう少し落ち着いてからやるね。」
どこか落ち着かない。それは、きっと華じゃない。
この私だ______。
" ええ、いいですよ。 "
そう言って、私に会わせようとする影。
死者と生者を巡り合わせるこのシステムを、私も使ったことがあった。" 一回死んでから。 "
あの時の記憶が今も脳裏から離れない。
私は一回、水没事故で亡くなった。でも、彼が、私を生き返らせてくれたの。だから、今の命は、二度目の命。大事に大事に使わないといけない命。