紅の真実 ①
珍しく、いつもより明るいこの世界。いつもなら、キャンドルの炎だけの部屋なのに。
あーあ、何か違う景色ね。
私は黒いローブを着て、廊下へと足を踏み入れた。
『真紅、仕事だ。』
「はいはい、やればいいんでしょ。」
最近はめんどくさい、その気持ちの方が勝っている。
だからか、心に迷いが現れてしまっている。
『真紅。』
私がここにいるのは、あなたを救いたいから。だから、あなたのもとにいるのに。
「ねえ、黒沢華ってどういう子なのよ。」
一段と興味が湧いた。だって、あんなに動き回ってるから。この子のために。だから、私が綺麗な芽を…。
「黒沢華は…。」
話してくれるその声と、見つめる瞳。何もかもが私とは違う。どこが、とは言い難いけど、何か違う。
私は楽しそうに話すあなたをじっと見つめた。
生者の世界と死者の世界を行き来する私は、もう死んでいるのか生きているのか、わからない。
「真紅。」
「なによ。」
「黒沢家と黒木家を簡単に見ては行けないわ。」
わかっていることをわざわざ言いにきたの。
喉元まで、その言葉が出そうになっていた。そんな簡単に言ってはいけないもの、わかってる。
でも、この子は私の中で3位くらいに嫌いなやつ。
とは言っても、この子は私がどう動くかを知ってて、言いにきたのかもしれない。
「勝手な行動は許さない。」
「そんなの私の勝手よね?」
にっこり微笑んで言ってあげる。私にも、誰でも自由はあるもの。それを制限される必要はない。
『なーにしてるの。真紅と柘榴。』
「なにもしてないわ。」
「私、もう行くから。」
このチームはなにも考えてない。というか、考えられない。自分の意思だけで動き、何もかも自分が一番だから。
私はそんなことを考えながら、生者の世界へと足を踏み入れる。