碧い風 ⑦
『話したい…ことは…、もう…』
「なに?」
言いたいことはわかっている。でも、それにわざとかぶせるように追い詰める。
強く言えば言うほど、こいつはビクビクするんだ。
「言いたいことがわからないよ?」
『だから…、』
もう言えないの。なにも。俺の目も見ずに、ずっと地面とにらめっこしてる。
もっとこれから、と思った時。
『時間だ。』
見知らぬ人が中に入ってくる。
『とっとと、華の元に戻れ。』
「指示するな…」
『黙れ。行け。』
もう黙って行くしかなかった。
出るとすぐ近くにいた黒沢華。
「終わりましたか?」
「…はい。」
今日はありがとうございます。それだけ言って俺は、黒沢華の元から離れる。
後ろを振り向いてもまだ頭を下げているやつの姿を見て、どこかムカついてくる。
しばらく歩いて、黒沢華も、黒木ひなたも見えないところへ行くと、俺は煙のように姿を消した。
たどり着いた先は、もちろん。
『碧。』
「黒沢華の力は本物だ。」
黒いスーツにキラキラをあしらっている、豪華なものに身を包んでいるこいつは、俺らのトップだ。
『黒木ひなたは。』
「誰だかわからなかったよ、鳳。」
見えるくせに。鳳は俺にそう言うんだ。
確かに見えるって言えば見えるし、見えないって言えば見えない。
物は言いよう、なんてね。
「これはどこに報告?」
『本当は翡翠様と言いたいところだが、今日はいないから…』
" からすに。 "
黒いカーテンが密かに揺れて、近くにあったローズのキャンドルの炎を消した。
華が目を覚ましても、納得できないところはいくつもあった。
華が目を覚ます前に見ていた夢とは何なのか。
" 華が全てを失った時、わからせてあげる。 "
人を恐怖感で支配するのが上手なことで。でも、私が心配なのは楓の方なんだ。
絶対に近付かせない。