碧い風 ②
『華!?』
「華さん!」
目が開いていた。新たな世界の旅立ちとは、このことなのか。
急に冷える身体と、窓から入ってくる生温い風。
夢で見たあの景色は、あの人は、何なのか。私の中では疑問でしかない。
でも、一番の疑問は…
「私が、全てを失った時に…」
『華…?』
「分からせてあげるよ…。」
そう言った彼の顔が頭から離れない。影をまとったような、闇の人間。神々しい光を放つくせに、実際は違う。そんな感じ。
『華…、お前…、』
“ どこでその言葉を聞いたんだ。 ”
何かを恐れているような、そんな表情で私に問いかける。
ズキズキと痛む頭と、この胸は、何かと一致しているらしい。
そんな時に、インターホンが鳴る。
「私、出てきますね。」
楓がそう言ってこの部屋から出ていくから。今は私とひなたと二人。私はそのまま、ひなたを見つめた。
この時間に何ができるだろう。楓がいない、二人の時間で。
そんなことを考えていると、現れる楓。
『どうした、楓。』
「お客様です。どうしますか?」
まだ正直言って、華も元どおりのわけではない。
そんな状態で仕事をこなせるとは思えない。
『今日は帰って…』
「楓ちゃん、行くよ。」
しっかりと身体を起こして、楓の目をしっかり見ていた。
その瞳はしっかりと瞳孔が開いて、いつもの華そのものだった。
でも、心配なものには変わりはなくて。
「では、ご案内します。」
それと同時に華もすぐに着替えを済ませ、一階のリビングへと足を進めた。
既にリビングのソファーで座っていた一人の青年。
恐らく、華と同世代くらいだと思う。
「あっ…、」
「初めまして、黒沢華です。」
“ 初めて…なのか、この人は…。 ”
華の心はそう呟いている。華がそう思っているということは、この人は初めてではなく、 “ 2回目 ” なのかもしれない。
でも一つ言えることは、私はこいつと会ったことがない。
華が思うってことは、どこで…?