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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 4
110/180

奪還 ②


『楓、少しだけついてきてくれないか。』


「ひなたさん?」



私が頼れるのは、今ここだけなんだ。


しばらく歩いて、たどり着いた黒沢家。大きい門が私たちの前に立ちはだかり、足がすくむ。

その門を開いて、私たちは中に入る。



「こんなところ…、いいんですか…?」



恐れ多い、とでも思っているんだろうか。楓はびくびくしながら私の後を追ってくる。



『ここは、華の実家だ。』


「実家?」



すとん、と言う効果音が聞こえそうなほど、楓の肩が一気に力を無くした。

安心したのならよかった、なんて思いながら動く。



『いらっしゃい、何か…』


『おばあちゃん、紫さんはいらっしゃる?』



隣でひそかに「おばあちゃん!?」なんて声が聞こえつつ、スルーする。

紫さんがいる、ということがわかって、上がろうとする。



『ちょっと待って、ひーちゃん。その子は?』


『この子は、華が守った山田楓。あの、山田桜殺害事件の生き残った姉。』


『この子は見えてるの?』



おばあちゃんがそう言った瞬間に、私は楓の方を見る。楓はびっくりしながら、頷いた。



『声も…?』


「聞こえてます。」



はっきり、おばあちゃんの目を見てそう言った。

おばあちゃん自身もそこそこ驚いた表情をしていて。

私は何も言わずに、その現場を見ていた。



『ひーちゃん、この子が…』


『華奪還計画を考えてくれる。』


「え、」



驚きの声が聞こえたが、そこは無視して動揺もせず、おばあちゃんの目を見つめた。



『この子の考えは、普通の人より大人びてるから。』



私でもびっくりするほど、この子は華と対等に物事を考えられる。そこはこの子の、楓の才能であって、誰にも真似できないところ。だからこそ。



『…こちらに。』


『楓、ついて来い。』


「はい。」



床のカタカタする音を聞き流して、楓はしゃがみ込み、ローファーの向きを整える。

そういうところを見ると、育ちのいい子なんだな、なんて感心してしまう。



『楓、置いてかれるぞ。』


「お待たせしました。」



すぐに立ち上がって、私の真後ろを歩く。あまり音を立てないように、静かに歩いている。

後ろから少しずつ香ってくる、オレンジの香り。恐らくこれは柔軟剤とかの香りであって、香水ではないと思う。



『お前、香水かなんかつけたか?』


「練り香水です。」



香水なんて大人びた物を。かすかに香るからこそ、ちょうどいいのだろう。濃くつけすぎたら意味がない。

おばあちゃんの後ろを歩いて、立ち止まった部屋。ここが紫さんのいる部屋で、この屋敷で一番奥の部屋。



『紫さん、お客様です。』


「どうぞ、いらっしゃい。」

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