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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 3
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洗脳 ⑥


『私に会わせたかったのって、あの子ですか。』


「お前が一番わかっているんだろう、雪。」



雪のように冷たく無愛想だから雪。そんな簡単に名付けた名前だった。

一番あいつのことを知り尽くして、陥れてくれるんだろう。そんな望みをこいつにかけて。



『私はもうあの子に会いたくない。』


「何で。身近すぎたからか。」


『あの子はゴーストアビリティーなはず。どうして…っ!』


「それ以上言ったら…、ね?」



僕が手を首元に当てるだけでひやひやしている。僕の目を見て、顔が青ざめていく雪。まるで本当の雪みたいに冷たくなっていく。

この顔がやっぱり好きなんだ。



「それでは持ち場につけ。」


『は…い…。』



びくびくしながら僕の部屋の扉を開ける。手汗でびっしょりなその手でドアノブに触れるから、閉める時には滑って、バタンと大きな音を立てて。



「あはは。びくびくしちゃって…」



面白い子。あの子には、たくさんの仕事を与えよう。あの子自身が冷華を、黒沢華を完璧なる闇に堕としてくれたら。黒沢華はすぐに堕ちるし、闇へと染まる。

一気に光を失い、何もできなくなるだろう。

それが見たいがために、操り続けるんだ。


そう思いながら僕はソファーの上に腰かける。それと同時に、眠気が誘い込み、眠りについた。



どのくらい寝ていたのか、体感では分からない。でも、1、2時間くらいは寝ていたのだろうか。黒いカーテンとろうそくの炎がゆらっ、と揺れる。


何か起こる。いや、もう既に起きているのかもしれない。


そんなことを思いながら、静かに身体を起こす。

ふわっと香る自分に、どこか嫌になりながら。



「嫌な香りだな、これ。」



なんて、ボソッと呟くんだ。

誰が聞いている、聞いていないなんて、特に関係ない。そんな時に聞こえる、いや脳裏にこびりついてる声。


“ やめてよ、こかげ。私はそんなすごくない。 ”


やめろ、離れろ。とっくのとっくにいなくなった、いや消し去った記憶だ。

その声を消し去るためにも、僕はその部屋から飛び出した。

僕が走っているからなのか、道の端に置いてあるろうそくの炎は揺れている。何本かは消えて、煙を出しているものもある。煙の匂いで充満しているこの道をとっとと抜けて、たどり着いたあの部屋。

そこを開けると、驚きな光景が広がっていた。



「どうして…、いないんだ…。」







私は洗脳されているのでしょうか。私自身、されていないと思うんだけど。

これから何が起こるかは分からない。また強くここにいたいと願うかもしれない。


だから、その前に、逃げよう。

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