洗脳 ①
目を覚ますと、純白のドレスを着させられ、お人形さんのような状態だった。
「起きたのか。」
「あなたは…?」
「初めまして。」
名乗らない彼を、私はじっと見つめていた。どこか知っているような、その雰囲気と、どこかで嗅いだことのある香り。
「黒沢華。いや、お前は今から冷華だ。」
冷華…? 私の名前…?
頭の中に疑問はたくさん出て来るけど、もうそゆなものはどうでもいい。
私は今から冷華なんだ。
「黒木ひなた。」
『お前…っ、』
「黒沢華は、いや冷華は…」
“ もう、こっちの物だ。 ”
その言葉を聞いた瞬間、何がなんだかわからなくなった。
華がそっちにつくはずがない。
『華に何をした…っ!』
「何もしていない。勝手についてきたのだ。それに、今お前は囚われの身。勝手に動かないだろう。」
正論だ。私は今動けない。華を救えないんだ。
「翡翠様。」
「どうされた。」
「鳳が会議を開いております。ぜひ。」
鳳。名は聞いたことがあるが、実際に会ったことはない。
どうにかして、ここから出る方法を考えなくては。彼らがその「会議」とやらに言っている間に。
「分かった。では行こうか。」
よかった、行ってくれる。そう思ったのも束の間。
「あとで。」
『え、』
あとで。その言葉は、今行くのではなく、あとで。
こいつは、私の元から離れる気がない。
じとっ、と見つめるその瞳は、私しか映らないようにしている。他のものなんて、眼中にない。それくらい、私を恨んでいるんだ。
「黒木ひなた。お前はもう逃げられないのだ。」
その言葉が永遠と頭をループする。