美しき蝶 ⑨
煙と化した俺らが辿り着いた場所は、暗闇に包まれた所。道の端には、ろうそくが立てられている。
照明の代わりに灯す、ろうそくの光。
「あ、嵯峨兄弟。」
「灯、その名前…」
「お疲れ、風、颯。」
暗闇から突然現れる、小さな男の子。でも、高校生なんだよな、こいつは。
「身長、縮んだ?」
「うるさいな、まだ159㎝だわ。」
なかなか160㎝にいかせてくれない、と嘆く彼。
3人で歩きながら、何人もの人とすれ違っていく。
「こんな会議なんて、久しぶりだよね。」
「本当、何か緊急事態なんじゃない?」
「それより、相変わらずその香りなんだね、風。」
“ バラの香り。 ”
いつものレモングラスとはまた違う。
そんな会話を続けていると、とある大聖堂に吸い込まれていく。ここが、会議が行われる場所。
もう、ほとんどの席が埋まっていて、急いで空いている場所に3人で座る。
「何か、いつもと違う。」
「それは感じてた。」
何が違うのか、そんなのは分からない。でも、雰囲気からして違うのを察してほしい。
そんなことを思いながら待っていると、後ろのドアがバタン、と閉まる。大きな音にビクビクしていると、周りの人たちが段々と立ち始めていく。
…もうそろそろ。
そう思うと柑橘の香りと、見覚えのある姿が現れる。
『さあ、始めようか。』
僕らの敵は、もうそろそろでいなくなるんだ。
あと少しで。
あの甘ったるい香りを匂わせなくなる。だから、こっちに引き込めばいいんだ。
全ては、彼らのために。