表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 3
101/180

美しき蝶 ⑧


さっきの伝言。今の俺らがやるべきことは、立花姉妹を手にかかること。

俺らと桜雅の指令は、まわりを消去来ることだから。それさえやれば、仕事は終わる。



「一禾。そんな簡単にできることじゃない。」


「春翔みたいに、洗脳…」


「そんなことしたら。」



一気に現実を目の当たりにする。どうやって手にかけて、どうやって堕とすのか。

きっと黒沢華みたいに、黒木ひなたみたいに、うまくはいかないだろう。

いっそのこと、風みたいに連れ去ろうか…。



「連れ去ったら犯罪だよ。」


「俺らは、そんなこと気にしてられない。」



犯罪だから、できることを制止されるのは一番嫌い。できることは、全てやらなくちゃ。


そんなことを思っていると、香ってくる百合の香り。



「お前、今日も…」


「今日は何もつけてない。」



こんな不自然に香る百合なんて、あるんだろうか。まわりをキョロキョロ見渡しても、ない。そんな花。



「まわりを見ても、見えないわよ。」



後ろから聞こえる声に、背筋が凍り始める。二巳に関しては、足が生まれたての子鹿みたいに震えている。

ただ、その声のトーンからして、大体誰かなんて見当はついている。



「どうされたんですか、柘榴さん。」


「色々ね。」


「いつもはミントの香りなのに、違うんですね。」



二人して怯える彼女は、一言で冷酷な人。体に触れても、心に触れても、心身ともに冷えている。


ちゃんと “ 生きてる ” のに。


血液がちゃんと流れているのか、心配になる。冷え性じゃ逃げられない。



「今日は、そういう気分なのよ。」


「そういう気分?」


「ええ。」



長い黒髪を耳にかけて、俺の目を見つめる。その瞳は黒に染まって、反射の光も見えない。まるでブラックホールみたいに、見つめられたらそらせない。



「二巳、あなたやることは。」


「…これから始めるところです。」



まるで、調査しに来たみたいに、二巳と俺を交互に見つめる。その彼女の表情は、殺気を含んでいた。

唇に塗られていた紅い口紅が、さらにその表情を際立てる。



「そろそろ、会議が始まるわ。準備をしなさい。」


「…今日、でしたか?」


「ええ。まさか、忘れてたの?」


「いえ。」



まるで保護者みたいな立ち位置と、その恐怖さ。

アメとムチの使い方が上手な人だ。


今日が会議だと忘れていた俺らは、準備なんぞしていなかった。



「早く。持ち物は言っていたはずよ。」


「家に寄ってから、そちらに向かいますので、先に行ってもらってもよろしいですか?」


「…わかった。早くなさい。」



煙のように消えて行った彼女を見送って、俺らは大学院から急いで家へと走った。


このことはきっと桜雅にも伝わってるはず。


そんなことを呑気に考えながら、 “ 向こう ” へのルートを辿る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ