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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 1
10/180

会いたい理由 ⑩


それから数日後。華の家に客がやって来た。





「はーい!」


「お久しぶりです。」






中島杏子だ。早くも二回目を使うのか、と思ったが、それは違かったようだ。

華はソファーに座らせ、コーヒーを持ってくる。







「砂糖とミルクはそちらにあります。」


「ありがとう。」


「今日はどのような……」


「お礼を言いたくて。」







びっくりした。お礼を言いたくてここに来るやつなんていない。使って捨てていくのがいつもだったため、声が出ない。






「あの時、貴一と会って、華ちゃんと黒木ひなたさんの話を聞いたの。」








**




『杏子、久しぶり。』


「ほんとに、貴一なの…?」


『そうだよ。』




509号室を開くと、私の愛しい人がすぐそばにいた。当時のまま、私の名前を呼んでくれていた。






『杏子の現在いまのこと、黒沢華さんと黒木ひなたさんに聞いたよ。』






私の知らない人の名前が出てきて動揺した。

華ちゃんは知ってたけど、黒木ひなたって誰?って。





『黒木ひなたさんは、僕と同じ存在。黒沢華さんのパートナー、みたいな感じだったよ。ていうか、杏子見れないか!』


「霊なんじゃ、私には見れないよ…」





視界が濁る。まともに物が見えなくて。

そんな話をしていると、すぐに時間は去っていった。





**





「そんな話をされてたんですね。」


「はい。貴一が楽しそうに話してくれて。」






前とは、数日前とは全く違う雰囲気じゃないか。雰囲気どころか、性格も変わったんじゃないか?


少し、疑ってしまう。






「楽しそうで何よりです。」


「あと一回。いつかまたお願いします。」


「私が生きてたら。」





華がそう言えば、杏子も「そうですね」と言って、コーヒーを飲み込む。

当分話をしてたのか、コーヒーもぬるくなっていて、すぐに飲めた。





「それだけ言いたかったので、帰ります。」


「もう、縁がないことを願います。」


「あはは、そうですね。」





笑いながら杏子は、コートを羽織り、外に出た。

またあの日みたいに、ハイヒールをコツコツ鳴らして、歩いていく。____







一人の銀行員。婚約した次の日に、その人を亡くし、悲しみの淵へと落ちた。

今日、その人と再会し、あなたが聞きたかったこと、聞けましたか?

話したかったこと、言えましたか?


今、大切な人は、今、大切にしておくべきなんだ。



もう、再会しないことを望みます。

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