子夜
この話しは自分が昨年8月に書いた日記みたいなもので、冬の今とは違い、汗ばむ昨年の
夏を思い出させるものです。
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近頃、翌日の試験のために、夜遅くまで教科書と睨み合うことが多くなった。子夜を過
ぎれば、出かけて気分転換をするのがいつの間にか、毎日続くようになった。明かりを消
し、部屋から出れば、外は深夜に静まりかえり、昼間の澱んだ熱気もすっかりどこかに消
えた。
街灯の途絶える夜道を照らす優しい光に気づき、夜空に浮かぶ月を見上げる。「満月
か」と言葉を漏らし、あることに気づく。炎天下の昼間を蒸す熱気に蔽われ、人気のなく
なった今に現れるもの。深夜にしかしない独特のにおいが四方に満ち溢れ、街に染み込ん
でいき、すべてをなだらむ空間があった。
その空間の先に、強く現実味を持った光が見えてくる。行き着く場は寝る間をも惜し
む、人工的な異空間だった。中に入り、寒いほどの空気に身を包まれ、彩れた棚に一通り
目を通したあと、何も買わずにコンビニを出る。背後から放たれた蛍光灯の光に照らされ
た道を戻り、決して明るくはない月明かりに移っていくと同時に、先ほどの身を包むよう
な違和感が抜けていく。代わりに、自分の体が今居るこの静かな空間の所属物に同化して
いく。そう間もなく、アパートにある自分の部屋の前に立つ。鍵を挿し込んだまま、この
先に広がる空間に入るのを躊躇いながら、鍵を回した。