「プロローグ」
どもどもKneeさんです
今話はプロローグです(*´ω`*)
「英雄様! ここは私達が!」
「くっ…済まない!」
また数人、部下達が足止めの為に命を捧げた。
もう自分の国は滅んでしまっただろう。
敵国である魔法帝国の帝都、その中心にある鉄の城の内部を、俺達は目標へ向かって走っていた。
小さい頃から剣を振っていた。 俺には剣しかなかった。
それなのに、国の人々を、家族を、愛する人を守れなかった。
魔物が放たれ国が蹂躙されたあの日、愛する人は俺の身代わりになり死に、魔法で最強の双剣となった。
「英雄様! あそこです!」
部下の1人が遠くの扉を指さして叫ぶ。
「うおおおっ!」
右手に握る剣を右上から左下へ斜めに一閃する。
その直後左手に握る剣を先程とは逆に一閃する。
ユニークスキル【双剣術】の《十字強斬》だ。
進行方向にあった扉に大きく“X”と刻まれた。
これでXの下三角部分を固定するものは無い。
「せあっ!」
Xの下三角部分を蹴り飛ばし室内へ侵入する。
この時点で俺達は10人。
作戦開始時は100人も居たのにだ。
俺達が入ってきた事を視認した魔法帝国帝王が杖を構えながら立ち上がった。
「ここまで来よったか。 流石は武技帝国が誇る英雄だ」
「その武技帝国も俺の無力のせいで滅んじまったよ!」
言葉を放つと同時に斬り掛かる。 部下達も一斉に重鎮達へと斬りかかった。
室内には魔法帝国帝王を含めた魔法帝国の重鎮達がいる。
魔法帝国を治めているだけあって、その実力はかなりのものだ。
俺の攻撃も見えない障壁によって受け止められる。 俺の斬撃を受け止めた帝王は目を細めると、俺の剣を驚きを含んだ声で呟いた。
「…その双剣、元は人間か?」
「っ…らあああ!」
質問には答えず、二振りの剣を目にも止まらぬ速さで振るう。 俺が使える中で最強の【双剣術】最高位スキル《神之双剣舞》だ。
例え神であろうとこれを防ぐことは出来ないだろう。 空間も、時間も、全てを斬り裂く斬撃だ。
「なっ…く……!」
「これで……終わりだああああ!!!」
絶叫と共に繰り出された最後の一撃が魔法帝王もろとも見えない障壁を斬り裂いた。
「…見事だ」
時間にして数分。
魔法帝国の帝王は武技帝国の英雄によって討たれた。
「英雄様…、終わりましたね…」
後ろから声を掛けられる。
彼女は愛する人の妹であり、帝王討伐に加わった女性の中では最強の剣士だ。
周りを見回すと生きている人間は8人だった。
よく見ると、敵の重鎮と刺し違えて死んでいる味方が2人いた。
その顔は誇らしげで、敵を討てた事を嬉しく思っているようだった。
「皆、良くやった。 この勝利は皆の…みんなのおかげだ。 今まで付いてきてくれてありがとう」
「俺たちの方こそ! 今までありがとうございました!」
英雄とその部下達…いや、英雄達が討ち取った城は、数秒後、白い光と共に爆ぜた。
◇
目を覚ます。
顔を洗い食事をし、身支度を済ませ学校へ向かう。
変わらない、いつも通りの日常だ。
俺は出来るだけ目立たないよう、無難に人生を過ごさなければいけない。
通学路。
ふと前を見ると小学生くらいの少女がフラフラと歩いていた。
「おーい、危ないぞー」
声をかけるが返事がない。
今日の授業は使う物が多くバッグが重い。 その為走り出すのが少し遅れた。
「おい!」
少女がいきなり90度程角度を変え、道路へと飛び込んだ。
何故少女がこんな事をしているのかは分からないが、俺は夢中で走る。
少女との距離は10メートルも無い。 が、その距離が遠い。
このままでは届かないと悟る。
目を見開き、集中する。
──キィーッ!
と、ブレーキをかける音。
その音が聞こえるのと同時に俺はなんとか少女の手を掴んだ。
「ぃけっ!」
声にならない声と共に少女を歩道へと引っ張る。
俺の努力のかいあって少女は歩道へと戻った。
俺の身体と引き換えに。
誰かが叫んだ。
俺は少女をひっぱって、その反動で道路へと出てしまった。
少女と目が合う。
その顔は、口を大きく歪め、目を見開き、そして嗤っていた。
その景色を最後に、俺の身体は潰れ、人生が終わった。
◇
気が付くと白い空間にいた。
目の前にはこの世の者とは思えない程に美しい少女。
俺は全く動けない。 どこかに力を込めようとしても無駄なようだ。
「初めましてライトさん、私は…神です。 貴方は残念ながらお亡くなりになられました。 享年18歳です」
そうか、やっぱり死んじゃったのか。
…ていうかライトって俺の事か?
「そうですよ。 貴方の次の世界での名前です」
次の世界…?
日本人じゃ無いのか?
「日本人どころか地球人ではありませんよ。 貴方には今の記憶を有したままに“地下世界”へと転生して頂きます」
アンダー…ワールド…。
「はい。 アンダーワールドにはレベルやスキルと呼ばれる物が存在します」
レベルにスキルって、ゲームかよ。
「貴方には転生特典として《特殊技能》をいくつか、スキルポイントも与えておきます」
お、おお…?
「ただ一言に転生といっても、通常の転生とは違い赤ちゃんからやり直す訳ではありません。
貴方が理解しやすい言葉でいうと“転移”ですね。 死後の転移で生を受ける訳なので転生であっていると思いますが」
ほうほう、それで俺は何をすればいいんだ?
働かずにのんびりすればいいか?
「…まあ後はおいおい分かっていくでしょう。 では、幸運を」
えっ、おい?
えっ?
ちょっ…。
視界が徐々に白くなっていき、それと並行して俺の意識も薄くなっていった。
最後に見た神の顔は、楽しそうにわらっていた。
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