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三月十四日

作者: 伊藤 総一郎

バレンタインデーというものができてからチョコの消費量が飛躍的に上がったと感じる。

あれはいけない。

何が好きな異性にチョコを送る日なのだろうか。


家を出てからの通学路、学校に着いて下駄箱、机の中、昼休み……。

貰えるはずはないと思いながらも、もしかしたら……と希望を抱く。

心臓に悪い一日でしかない。


最近では友チョコから義理チョコまで何でもありときた。

もはや当初の神聖さや初々しさはこの冬の一大イベントにはない。


さらには商魂たくましい菓子メーカーはその一か月後にホワイトデーなるものを設定した。

貰ったチョコのお返しを送る日。……ド畜生である。

2月に心を弄ばれ、3月にはトドメを刺されるという世知辛いイベント。


そんな日でありながら男子達の気概もさるもので、特に頼まれてもいないのに女子へのプレゼントを敢行。

気合の入ったことに手作りのチョコレートを贈る奴もいる。

テンパリングってなんだよ。こっちの心がテンパリングだよ。


はしゃぎ倒す男子たちを尻目に教室を出て、近道をして保健室へと向かう。

昼休み頃の保健室はがらんとしていて絶好の昼寝スポットだ。

ほんのり香る薬品の匂いを鼻に感じながら、カーテンで仕切られらた角のベッドにゆっくりと近づく。


純白な布切れをくぐるとそこには寝息を立てる女子生徒がいた。

真昼間からよくもまあぐっすり寝られるもんだと感心しつつそばに近づく。

距離はあっという間に縮まり、彼女と僕との唇を遮る空間はなくなっていた。

すると、寝ていた女子生徒は目覚ましにでもたたき起こされたように跳ね起き、僕を視認してはにかんだ。

その微笑に僕は顔を背けてしまう。


本日はホワイトデー。

なにも不思議なことはない。

先月の、「あまりにも粗末な贈り物」のお返しをしたに過ぎないのだから。


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