1-3 世界は広いのか、
「これを見れたみたいだね。
綺麗でしょ。見せたかったんだけど、起きなくて困ってたんだよ。」
「あ。あ、ありがとうございます。」
「敬語じゃなくていいよ。とゆうか、君の名前は、って下に降りなきゃダメだよね。うーんでも、こんなにもでかいと皆に怖がられて、しようがないしなあ。ああ!どうしよう!」
コイツは大丈夫なのだろうか。下は一面、森だ。ボクでも分かる。絶対このあたりには人は住んでいない。さらに誰も来ないだろう。テレビで何処かの森の映像があった。その森は人が立ち入れたことのない、密林で地球最後の秘境だった。この眼下に広がる風景はそれそのものだろう。ボクがコイツを罵っているのを心の中で行っている最中にも、ドラゴンはしゃべり続ける。
「・・・っで、どうする?」
「降りたらいいと思います。」
「仰せのままに。なーんてね。目を瞑っていたらいいかも。しっかり掴まるんだよ!」
いやいやいや。何で急に降りようとしてるの馬鹿なの、死ぬの?ドラゴンだからって、死なないとでも?ボクは人間です!ほぼ頭から地面に突っ込もうとしているだろこれ!やっぱり、大丈夫か、コイツ・・・
目の前が真っ白になる。耳がキーンとして頭がぼんやりしてくる。夢がさめる感覚と似ている。
「・・・おい。おい。大丈夫かい?」
「・・・ん・・・。って急すぎじゃボケ!」
「うわっ。ごめんなさい。」
「判ればいい。で、誰?」
黒いフード付きのマントを着た、黒髪の少年がボクのことじっと見つめていた。黒い目の中には、安堵と少しの不安が宿っているかのように見えたのは。
「うわっ。何する・・」
「いいから黙って。」
黒髪で少し艶のある少年の髪は、サラサラしてさわり心地はよかった。頭の上のクセを押してみたら、手を離したらすぐ元の形に戻って、ひょこひょこと動いていた。つむじあたりから生えてきている髪は、まるで生き物のように動いていた。緊張で震えているみたいに揺れる髪を今度はそっと指先でつついてみる。
「んぐっ・・・。」
下の本体の方の奴が食いしばっていた口から変な声を出して、小刻みに震えていた。頭の上のも、一緒になって震えている。何度も何度も指でつつく。「ふぎゅっ!」少しに強めに押してみる。「もぎゅ!」精いっぱい手を伸ばして、頭の上に置いて、振り下ろす。叩くに近い行為だが当たる寸前で止めたつもりだった。実際止まってはいたのだが。
「ぎゅう!」
見事に、頭の上に生えていたものが潰れていた。
手をそろりと離すと黒フードの少年は全身から力が抜けたように、ぐったりとボクの上へ倒れ込んだ。




