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6話

よろしくお願いしますm(_ _)m

「なんだ、(仮)王子か。何か用?」

「その(仮)を止めろ」


(仮)王子は地味な服装をしていた。顔が派手なので似合わない。と言うか、もしこの格好が変装なら逆に目立つ。

ステラさんがお茶を持ってきた。(仮)王子は丁寧に頭を下げる。さすが王族、所作が綺麗。性格はアレだけど。


「叔父上から街を案内するように仰せつかった。お前、こちらに残るそうだな。何故帰らなかった?」


あれだけ帰せと騒いだから(仮)王子の疑問はもっともだけど、話して良いのか分からない。人の命を使わないといけないなんて言わない方が良いに決まっている。それに知っていたら、あの時点で止めるはず。と言うことは、知らないと考えるべきだろう。


「事情が変わったの。どうしても訳を知りたいのなら将軍から聞いて」

「……叔父上が認めたのなら、俺からは言うことはない。だがな、変な真似をしてみろ、俺がお前を裁いてやる」

「どうぞ、お好きに。……ところで、案内してくれるんでしょう?早く行こうよ」


フランツさんとステラさんに見送られ、街に出た。お金は将軍から預かったものをフランツさんに渡され、服などを買ってくるように言われた。

私が今着ている服は、ステラさんに借りている。申し訳ないと思っていたから助かった。

街は聖誕祭も終わりに近付いたというのに、まだ盛り上がっている。それのお陰か、お店には大安売りの文字が並んでいて、雰囲気だけで高揚した。


「洋服を見るのだったな……って、おいこら!どこに行く!?」

「ちょっと来てよ(仮)王子!これ美味しそうだよ!」


匂いに誘われ、焼串の屋台へふらふらと。タレをたっぷり塗ったお肉が良い音を立てて並んでいた。


「おじさん、これ一つ下さい!」

「はい、まいど!熱いから気を付けて」


受け取ったお肉はそれはそれは美味しかった。自分じゃこんな味は出せない。きっとタレに秘密があるんだろうな。


「ん~っ凄い美味しい!おじさん天才!(仮)王子、食べてみなよ」

「俺はいらなっ!?なにふる!」


いらないと言い切る前に(仮)王子の口に肉を突っ込んだ。吐き出す訳にはいかないらしく、仕方なしに咀嚼していたけど、段々と眉間の皺が消えていく。


「どう?(仮)王子、美味しいでしょ?」

「……うん、まぁ、美味いな」


私とおじさんはしてやったりとにんまりと笑いあった。

その後、服屋に行くまで何軒か屋台を梯子して、こちらの世界の食べ物に舌鼓を打つ。

あ~満足。お腹一杯で幸せだ~。


「おい、いい加減にしろ。今日は服を買いに来たんだろうが」

「そうだった。(仮)王子。案内よろしく」

「まったくお前は……。それと、王子と呼ぶな。一応、忍んで来ているのだからな」

「忍べてない気がするけど……。じゃあ何て呼べば良いのさ?」

「アレクシス様だ」

「了解、アレク。さ、行こうか」


愛称で呼んだら隣を歩きながらギャンギャン噛みつかれた。無視していると諦めた。私の粘り勝ち。

服屋では、安いものを中心に選んだ。散々食べ歩いちゃったけど、これは将軍のお金。アレクは将軍は気にしないと言うが、私が気にする。

勤労少女を嘗めるな。働かなくても食べていける王族とは違うのだよ。


屋敷に戻ると正式に私の部屋となった自室の衣装棚に買ってきた服を仕舞、リビングに行くとアレクが優雅にお茶を飲んでいた。心なしか出掛ける前より雰囲気が柔らかい。


「ねぇ、アレク。アレクも魔法使えるの?」


街を歩いて知ったのは、魔法が生活に根付いているということ。屋台では魔法を溜め込んだ石が使われ、その石に魔法を注ぎ込む商売まであるらしい。大道芸では火の鳥や、水の竜なんかも出していて、心踊ったのは言うまでもない。


「ああ。魔法には敵性があり、魔力があるからと言って全ての属性を使える訳ではない。俺は雷の属性が強く、水属性は苦手だ。他にも治療や幻覚といった魔法もある」

「へ~、楽しそう。……ところでアレク。普段は自分のこと“俺”って言うのね。上品に“私”で統一しているのかと思ったよ」


私の指摘にアレクはムッとした。こんな表情をみると王子とは思えない。服装と相まってどこにでも居る兄ちゃんみたい。……いや、無理か。綺麗な顔が浮きすぎている。


「礼をもって接するのが俺の信条とするところだが、お前には勿体無いと気付いた。それだけだ」

「ふ~ん。まぁ、私も今の方が話しやすくて助かるよ。堅苦しいのは苦手なんでね。それよりもさ、美味しかったよね、屋台。また食べたいな」

「コロコロ話を変えるな。何を話しているのか分からなくなるだろうが。……魔法のことだったな。なんだ、使いたいのか?」


アレクの言葉に頷いた。使えるのなら使ってみたい。魔法なんてこれぞ王道ファンタジー。

溜め息をを吐きつつ教えようとしてくれる。実は良い奴らしい。

室内は何かあると危ないので、外に出た。確かに失敗して火がボァ!家が丸焼けなんてことになったら大変だよね。


「先ずは基本だな」


そう言って掌に蝋燭程の炎を出した。ユラユラと灯り、ポッと消える。どういう原理なんだろう……。


「呪文は特にない。大切なのはイメージだ」


言いながら今度は雷の獅子を出す。魔力を抑えているのか掌サイズの獅子だった。

教えられた通りイメージを固める。アレクが出したような蝋燭の火を。

すると掌に段々と熱が集まり始めたが、上手くいかない。首を捻りつつ今度は指先に集中する。


「わっ!出たよ、ほら!」


それはまるでチャッカマン。魔力はあるらしいけど、チャッカマンって……。

調子に乗り次々試した。水鉄砲並みの水。団扇並みの風。静電気並みの電撃……。


「ねぇ、これってどうなの?」

「初心者だから何とも言えないが……。しょぼいな」


窓から見学していたフランツさんとステラさんにも意見を求めると、ステラさんは笑って誤魔化し、フランツさんは「しょぼいですね」と辛辣な言葉を頂きました。

色々と試してみた結果、私には全属性の魔力が備わっている事が判明しが……全部しょぼい!

役立ちそうではあるけれど、どれも威力が無いので攻撃には使えない。そもそも攻撃魔法が必要になる瞬間が訪れないことを祈る。もしもの時は全速力で逃げたほうが安全かも。


「お前は凄いのかどうなのか分からないな……」

「ちょっと、誉めてるのか貶してるのかはっきりしてよ」

「一応、誉めている」


へ~、誉められてたんだ私。知らなかった。

将軍が帰宅し、アレクと供に魔法の成果を見せると微妙な顔をしていた。

うん、その気持ち分からなくもない。私も同じだし。

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