第五話「旅立ち」
今回で一応零章が終わり、次から物語が始まる予定です。
ここまでで世界観などが伝わってくれたらと思うのですが、なかなか自分で書くとなると難しい物がありますね。
伝えたい事を伝えられる文をかけるように頑張ります。
学園に行くことが決まり、早速準備を始めていた。
そして出発の前日に両親と話をしていた。
そこにいる無一は覚悟を決めたからだろうか? 醸し出す雰囲気が今までとは違っていた。
「無一、学園に前に知っておいてもらわないといけないことがたくさんある。それを今から教えるぞ」
「はい。父さん」
「まず、世界についてだが。全ての人が称号を持ち、魔法を使って生活している。
魔法には大別して『火・水・風・地・雷』の五属性と、それらに分類されない特殊な『無』属性の六種類があり、多くの人は自分の称号と合う一つの属性の魔法を中心に使い、それ以外の属性は道具に頼ることが多い。
父さんと母さんは地属性の魔法が得意でそれ以外の属性、例えば火や水なんかは道具に頼っているってわけだ。
前に見せた『クリエイト』は地属性で『アビリティ』は無属性だな。また、無属性は魔法自体の難易度によるが得意属性に関係なく使えるものが多い。それに、属性の違う魔法でも使い方によっては同じような効果を発揮するものもあるから一概には言えないところが魔法の難しいところでもある。
そういうわけだから全く魔法が使えなくてもすぐには問題にはならないと思うが……
無一の場合街での一件もある、くれぐれも称号のことについては気をつけるんだぞ。
それから基本的に魔法は魔法でしか干渉できない。だからもし魔法を向けられたらすぐに逃げるんだ。いいな? 」
「はい。気をつけます」
「次に学園についてだが。無一が通うのは大陸中央の大国、グランデ王国にある『セント・サラース学園』というところだ。
そこには十二歳から二十歳までの様々な国の人が在籍しているらしい。
また、学園では魔法・武術・歴史・地理・工学など始めとして様々なことを学ぶことができ、ここで学べないことは無いとまで言われるところだ。ここでしかできないこともたくさんあるだろう。多くの人が集まるこの場所は何かを学ぶには最適の場所だと言える。
何を学ぶのも無一の自由だ。なんでも好きなこと、そして多くのことを学びなさい。
「わかりました」
「よし、それじゃあ最後に外の世界で気をつけることだ。人が住む場所の周囲にはまずいないが、誰も立ち入らないような場所には『魔物』と言われる存在がいる。
それは獣や植物などに長い時間をかけて魔力がたまり、自我を持った奴らだ。基本的に魔法でしか倒せない上に人より頑丈なものが多い。
数はあまり多くないと言われていてよほどのことがなければ出会うことは無いだろうが、一応覚えておいてくれ。
もし出会ってしまったら何をおいても真っ先に逃げろ。間違っても戦おうとするなよ。それこそ十分に訓練を重ねた者でなければ太刀打ち出来ないからな。
ここまでのことをきいて何かあるか? 」
「すぐには思い浮かばないけどいろいろ不安な事はあるよ。でも実際にやってみないとわからないことばかりだと思うし、何かをやる前にきちんと考えてから動けば大丈夫だと思う」
「なら、俺から教えることはもうない。あとは自分の目で見て肌で感じて学びなさい。母さんからは何かあるか? 」
「そうねぇ、私からは一つだけ。世の中には辛いこともたくさんある。だけどそれと同じくらい楽しいこともあるの。
だから挫けそうになっても決して諦めてはダメよ。諦めなければ必ずいいことがあるから。
それに自分一人でできないことも二人三人と力を合わせればきっとできるようになるわ。だから力を合わせられる、信じられるそんな友達を作りなさい。
そうすれば一層楽しくなるわよ」
「ありがとう、母さん」
そうして両親からの言葉を胸の裡にしまった。
その後は両親と他愛のない話をたくさんして過ごした。
そうして旅立ちの前日を過ごし、夕食には一際豪華な料理を食べ、幸せな時間が過ぎていった。
この日はいつまでも記憶に残る思い出の日となることだろう。
そうしていよいよ旅立ちの日の朝がやってきた。
雲一つない晴天という最高の天気で無一の気持ちもいよいよ高まってきている。
「いよいよ旅立ちの日だな」
「無一、忘れ物はない? 着替えに食料、それに地図やお金とか全部持った? 」
「大丈夫だよ。それにこいつ(短刀)もね」
「無一。昨日俺が言ったことは覚えているな? 」
「覚えてるよ」
「よし、あとは精一杯頑張れ」
「はい」
そうして父と言葉を交わし、
「無一、それじゃあ元気でね。必ず帰ってくるのよ」
「うん! 」
次いで母と言葉を交わし、
「よし! 行って来い」
「いってらっしゃい」
「行って来ます! 」
両親見送られていよいよ無一は旅立った。
十二年を暮らした村を一人で発ち、大きな世界へと一歩を踏み出す。
そこで多くを学び、成長し、再びこの地に戻ってくると誓って。