記憶Ⅰ
初投稿です
すゥ―。
頬を風と共に弾がえぐって征く。痛みは感じない。
もとより痛みを感じてうずくまる事を自分に許していない。
実際、私の身体には既に無数の風穴が、私の切る風と合わせて虚しい音を奏でていた。
口元まで垂れてきた血滴を素早く舐めると私はさらに速度を上げ、駆ける。鉄臭い血の代わりに潤滑油が口の中で広がる。慌てて味覚をOFFにした。
追手は2人。ガタイの良いおっさんと「でかい獲物」を携えた女。恐らくあれは捕縛用の兵器、電磁パルスを極小規模に発生させる為のもの。喰らった瞬間シャバでの生活とおさらばである。おっさんの方がオモチャみたいにパンパンやっている拳銃はどうやら旧世界の仕様らしい。最初弾に身体を貫通された時は詰んだ、と思ったが特に支障はなかった。
ここいらの地形には疎い。すぐに行く手を阻む壁とご対面である。飛び越える事も考えたが、思ったより高いそれを超えている間に、殺られるだろう。案外頭は冷静で、もう死に方を考え始めていた。つかの間の終活である。
、、、この薄汚いスラムで鬼ごっこするのも飽きた所よ。なんて口に出してしまえば自らの涙を誘発してしまいそうなセリフを飲み込んで、後ろを向く。息を切らした様子もなく二人が角から現れ、私は追い詰められた。
こんな時でも手や足が震えたりしないのだから、この身体はやはり便利だなんて思う。
ちょっと困った様子で、頬をかいて、それからえっと、最期になんて言おうかな。
「あっ、、、
女は顔色一つ変えずに引き金を引く。
その兵器が一瞬光ったように見―。
そこで私は死んだ。
この度は、最後までお読みいただき誠にありがとうございました
世界観の解説ナシ。ディティールの甘い中、よくぞ頑張ってくれました。
1話分の長さはうまい棒程度で、テンポよく連載していけたらな、なんて思っております。




