プロローグ
一瞬だった……
自分の体が数秒の浮遊感を纏い、次第に全身へ痛みと言う名の刺激が馳け廻り死を感じる。
だけど今の自分の顔を見れたとしたらきっと安心したような微笑みを浮かべているだろう。
だって今の自分はこんなにも満足で満たされているのだから。
だから、なんでこうなったかなんて、もうどうでも良い。
俺は死を選んだのだから……
この世界が嫌だった。いつも色褪せた日々、退屈な日常、全てが歪んで見えた……いつからか醜く見えていた。
死んだらどうなるのかと思っていたが地獄だとか天国とか無いようだ。
死んでいるのに足がついている身体。
本当に死んだのかと疑いたくもなる。
ぼんやりと考えていた所為か目の前の存在に気づくのに遅れた。
「やぁ、死にたがり屋さん」
其奴は人形の様に小さかった。
「その目、今見下したよね? 思いっきり馬鹿にしたよね?」
人形はニコッとするが笑顔が笑ってない。
「まぁ、良いわ。貴方って今まで自分の事しか考えないで生きてきたでしょ?だからね、良い機会だからもう一度、本当に世の中の何が嫌なのか、何が醜くいのか確かめてきな」
余計な事をしないで欲しい。もう良いって言っているのに。
其奴は申し訳無さそうに話を続けた。
「あと一つ、貴方は落下途中だから地面への衝撃に備えてね」
もう構わないで欲しいのに……
「リミットはいっしゅーーのあいーー大事に」
ノイズが入り聞き取り辛い声が耳に入ると世界が歪んだ。
そして、世界が闇に変わる中、其奴の声が頭の中に響く。
「後は君次第だよ?フェアリーシステムにようこそ」