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それぞれの役割

 「それでバトルはいつやるんだ?」

 バトルをするにしてもまだ日程もルールも決まっていない。国民への報告や告知もしなければならないしそれなりの日数がかかりそうだ。

 「一週間後ってところかしらね。それだけあれば報告や告知、情報拡散もできるわ」

 「了解。ルールはまた連絡くれ」

 「わかったわ。じゃあ動き出してくれるかしら、マネージャー」

 ソラネはそう言って立塚さんの方を見る。

 「了解。三日もあれば楽勝ですよ」

 「さすがです」

 俺がきょとんとした顔でその光景を眺めていると立塚さんが笑顔で説明してくれる。

 「私は空野音のマネージャーだけではなくソラネのマネージャーでもあるんです。ソラネがMSL内でライブをするときなどは宣伝なども担当することもあります」

 「国の中では宰相的なポジションに位置してるわ。私の国では結構な偉い人なのよ?」

 「なるほどな……」

 確かにソラネのすぐ近くにいる存在として立塚さんは一番の適任者である。リアルでも多くの時間を共にしている立塚さんならソラネも安心できるだろう。

 「もちろんプレーヤーとしても私を支えてくれる大事な存在よ。立塚さんも聖唱の卒業生なだけあって実力はなかなかのものよ」

 「この前のMSL内ライブではコーラスとして参加してましたね」

 「リンネも来ていたのね。リアルのライブでは表に出ることはないけどMSL内で行われるライブには参加してもらってるわ」

 聖唱の卒業生であればコーラスなどの経験は豊富だろう。その実力はリアルのライブでも充分表に出てもおかしくない程であることが想像できる。

 「とにかく詳しいことが決まったら連絡するわ」

 「了解。楽しみにしてるよ」

 「ええ」

 楽しみにしてる。

 この言葉に嘘はない。俺が負けるとはこれっぽっちも思ってはいないが、相手はアイドル界に現れた天才と呼ばれるソラネだ。俺を負かすためにどんな歌を歌ってくるのか、どれだけ俺を楽しませてくれるのか、考えただけでも顔がニヤけてくる。先程から俺の心は踊りっぱなしだ。

 「師匠。顔がニヤけてますよ」

 「そうか?楽しみで仕方がなくてな」

 「おねえちゃんとのバトルを楽しみなんて言うの師匠くらいですよ」

 「そんなことないだろ。ヒトマサや会長あたりは言いそうだけどな」

 心底楽しそうに笑う二人の姿が容易に思い浮かぶ。

 「師匠達が特殊なんですよ……」

 リンネは苦笑いを浮かべる。

 まあ、俺達音楽バカにとっては音楽と音楽の本気のぶつかり合い程燃えるものはない。その相手がソラネ程の才能の持ち主であるなら尚更だ。

 「うちの領民にも伝えておかなきゃな」

 「そうですね。全員にメッセージを送っておきますね」

 「頼んだ。リンネ」

 「はい!」

 今現在俺の領土にはリノにゃんの元領民五十人程と会長の元領民三十人程を合わせた八十人程が所属している。この八十人とはリノにゃんと会長がきちんと面談をして、二人の了承を得た者達だ。

 そして領民と俺を繋ぐ役目を担っているのがリンネだ。主に領民への直接的な指示を行う立場だ。俺の指示を的確に領民に伝える大切な仕事をしてもらっている。大切な仕事の為誰に任せるか非常に悩んだ。しかし、悩めば悩むほどリンネしか任せられるものはいないという考えに至ってしまった。

 だって考えてもみろ。会長や雅人にこんな仕事が任せられると思うか?無理だ。絶対無理だ!雅人ならケラケラ笑いながらこなしてしまうかもしれないが些か不安である。リノにゃん?問題外だな。

 リンネがこの任に就くのは必然だったのかもしれない。

 「よし。辛気臭い話はここでおしまいにしましょう。ラク、私はあなたの話がもっと聞きたいわ。学校ではどんな立場にいるの?学校は楽しい?家ではどんな生活をしてるの?好きな食べ物は?好きなアイドルは?もちろん私よね?」

 「よし、落ち着けソラネ。一つずつ聞こう」

 その後、俺の姿を見た者はいない。

 ……いや、生きてるからね。ちょっと疲れただけで生きてるからね?



 「なるほどね~。それでソラネさんとバトルをすることになったと」

 「ああ。心躍るだろ?」

 「そりゃもちろん」

 俺は現在領宮の会議室で事の顛末を報告していた。

 軽く百人は入れるような会議室には俺や雅人をはじめとする中心的な人物が集まっていた。ちなみにリンネは伝達作業を行っているため不在だ。ケイトも店があるため不在である。

 「でもー相手はあのソラネちゃんでしょー?かてるのー?」

 会長の間延びした声が会議室に響く。今日は一段とダルそうだ。会長は今日ここに来る前某有名ホテルで演奏をしてきたらしい。そのような場所で演奏することが苦手な会長には少々こたえたようだ。

 「え?負けるはずないでしょ?」

 「ラク君の自信はどこからでてくるんだろうねー……」

 会長があきれたような顔でこちらを見てくるが気にしない。

 「まあ、ラクが自信過剰なのは今に始まったことじゃないし、それに見合った実力があるから何ともいえないよなー」

 「うわー。ご主人様ってここまで自信過剰だったんだ」

 おい、猫耳メイドジト目でこっち見るな。

 「とにかくそういうことだからみんなよろしくな」

 俺が切り上げるように伝えると了解と返事が返ってくる。

 みんなから反対意見が出ることはなかった。考えてみれば反対意見が出るわけがない。ここにいる連中、といっても三人だけだが、その全員が重度の音楽バカだ。ソラネとのバトルを楽しみにしないわけがない。

 「そんなことよりさー。所属申請が全然止む気配がないんだけどー!」

 会長が机に突っ伏しながら悲痛な声を上げる。

 「ありゃー。まだ止まないんですかそれ」

 「ヒトマサ君変わってよー」

 「いやですそんな面倒くさいこと」

 「むー!」

 会長と雅人のそんな会話を聞きながら俺は溜息を吐く。

 俺が領土を手にしてかなりの時間が経った。その中で、ソラネにも言われたが所属申請が毎日のように舞い込んでくる。普通なら喜ばしいことなのだが俺達にとってはそれほど喜ばしいことではない。

 ソラネにも言ったようにこの手の申請はすべて断っている。この騒動が落ち着けば受け入れも考えるが今の状況で申請を受けることはできない。どんな奴らが入ってくるか知れたもんじゃないからな。

 そして、その申請を一手に受けているのは会長だ。会長にはこちらに届いた申請をすべて拒否する作業をしてもらっている。

 俺の領内では中心メンバーに役割を与えている。会長には申請の拒否作業。リンネには俺と領民の仲介役。ケイトと雅人には主に楽器関係を担当してもらっている。リノにゃんはすべての作業のサポート役だ。

 役割を決める際、楽そうだからという理由で申請拒否の作業を選んだ会長だったが、その予想外の面倒くささに少々参っているようだ。

 「リノにゃん。悪いけど会長のサポートに回ってくれる?」

 「了解にゃーん」 

 俺がリノにゃんにサポートを頼むとすぐさまコンソールを開いて作業に取り掛かってくれる。

 リノにゃんの役割である全作業のサポートというのはリノにゃん自らが言い出したことである。元領主であるリノにゃんはあらゆる面で勝手がわかっているからというのがリノにゃんが述べた理由だ。もちろん俺の領主としての作業も手伝ってくれる。はっきり言って凄く助かっている。

 「悪いなリノにゃん。昨日はヒトマサ達と楽器素材の調査に行ってくれたんだろ?」

 「大丈夫だよ、ご主人様。サポート役の重要性はよくわかってるからね。任せなさいって」

 「ああ、ありがとう」

 リノにゃんまじいい女!良妻になりそうだな!

 「ほらー!スズ!作業に戻るわよー!」

 「ええー……。もうちょっと休憩……」

 「文句言わない!」

 「うぇぇい……」

 会長は少しリノにゃんを見習ったらどうなんだ。いや、任せてる俺が言えた義理じゃないけど……。

 そんなことを考えていると俺のもとに一通のメッセージが届く。

 「来たか……」

 送り主はソラネ。

 おそらくバトルのルールや日程についてだろう。

 「みんな聞いてくれ。ソラネから連絡が来た」

 俺の言葉を聞いてそれぞれの作業をしていた皆がこちらを向く。

 「バトルは四日後。日曜日だな。三曲勝負のジャンル自由。演奏メンバー人数指定なし」

 「まあ、本気バトルにジャンルやメンバー指定はないよな」

 「そうだな。そんじゃ、作戦会議と行きますか!」

 俺の言葉に応!と皆が返事を返した。


どうもりょうさんです!

シルバーウィーク中は毎日更新できたらいいな……。次回をお楽しみに!

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