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 「それでラク。ソラネさんが鍵になるってどういうことなんだ?」

 場所を宿屋へと移し一息ついたところで雅人が先程俺が言った言葉について聞いてきた。

 「そうだな。まずはこの映像を見てくれ」

 俺は一つの動画ファイルを選択し起動する。映像では先程まで俺達が見ていた光景が映し出されており、リノにゃんがステージ上で歌いながら踊っていた。

 「これはリノにゃんのライブか?」

 「そうだ。リノにゃんが得意としているのは映像でも流れているような電波ソングだ」

 「……っ!」

 俺が電波ソングと口にした瞬間ソラネの肩がぴくっとはねる。その理由を知っているのは俺と従姉妹であるリンネのみだろう。実際リンネが苦笑いをしながらソラネの方を見ている。

 「電波ソングってあのピコピコしてるやつだよな?」

 雅人さん?表現が幼稚ですよ?ピコピコって……。

 電波ソングとは萌えソングと同じような意味を持つ音楽で、テクノ系の伴奏が多く用いられアップテンポな曲が多いジャンルだ。アニメやゲームの主題歌に多く使用され、歌手は特徴的な声、主には萌え声を得意とする声優などが担当することが多い。あまり意味のわからない歌詞が使われることが多いが、何故か頭から離れない中毒性のある曲が多く存在する。

 普段からどこから出しているのかわからないような甘い声を出しているリノにゃんにこれ以上にふさわしいジャンルはないだろう。

 「それで?電波ソングを得意としているのはわかったけど、これとソラネさんにどんな関係があるんだ?」

 「そうだな。それじゃこの音楽ファイルを聴いてくれ」

 「……っ!?ラク!冗談だよな!?ラクがそのファイルを持っているわけが……」

 残念だなソラネ。俺の交友関係を舐めるんじゃないよ。

 俺は一つの音楽ファイルを選択し再生する。

 「こ、これって……」

 「う、嘘だ……」

 アップテンポという次元を通り越したBPMの伴奏、心躍る電子音。そして、いつもより数段幼いソラネの声。そこには完璧な電波ソングが出来上がっていた。

 「空野音13thシングル購入者20名限定特典CD2曲目!『コイノヨカン』だぁ!」

 「いやあああ!」

 あらぁ……。ソラネが机に突っ伏してしまった。やっぱり本人的にも黒歴史なんだなぁ。俺は好きなんだけど。

 「どうしてラクがその音源を持っているんだ!」

 「まあ、確かに普通なら最近空野音を知った俺がこの激レア音源を手に入れることはできないだろうね」

 この音源は、空野音の13枚目のシングルを購入しCDについてくる応募券で応募し当選しなければ手に入れることができないCDに収録されている。普通なら俺が手に入れることはできない。更に、動画サイトや音楽サイトにアップされても即刻削除され、公式に配信もされていない幻の音源なのだ。

 「じゃあ何故!」

 「普通なら手に入れられない。普通ならな」

 そう普通ならな……。

 「ソラネの所属してるレーベルってさ、俺の母親も昔所属しててさー。社長とも結構仲が良いんだよねー。……というわけ」

 「井上のやろおおおおお!」

 こらソラネさん?本名は出しちゃいかんでしょ。ついでに言葉遣いも宜しくないですよ?今をときめく人気アイドルなんだから気を付けようね?

 まあ、取り乱すのもわかる。なんせ世界で二十人程しか知らない黒歴史を晒されたのだ。俺も昔のお遊戯会の映像を見せられたら悶絶するどころか気を失ってしまうだろう。でも、今回のバトルに勝つにはどうしてもソラネの力が必要だ。普通にバトルして勝てる可能性はないこともないがかなり低いものだ。あの集団の少なくとも半数をこちらに振り向かせようと思っても考えただけで頭を抱えてしまう。

 「頼むよソラネ。お前の力が必要なんだ!」

 「し、しかしな……。あの声を出したりあの歌い方をするとなると私も相当の覚悟が必要で……」

 やっぱり簡単に首を縦に振ってはくれないか……。先程からソラネは下を向いたまま俺と目を合わせてくれない。

 しょうがない……。奥の手だ。

 「ソラネ。今回はソラネ一人で歌ってくれと言っているわけじゃないんだ」

 「……?」

 俺の言葉にソラネはゆっくりと顔をあげる。そこでようやく目が合った。その表情は恥ずかしさと不安が混じっていてぐちゃぐちゃだ。

 「今回はリンネにも歌ってもらう」

 「……リンネも?」

 「……はぁ!?」

 リンネは俺が聞いたことのないような声を思わず出してしまう。

 「し、師匠!?僕そんなの聞いてないですよ!」

 「言ってないし」

 「い、嫌ですよ!ぼ、ぼ、僕が電波ソングなんて歌えるわけないじゃないですか!僕、おねえちゃんみたいな可愛い声出ないですよ!」

 リンネは首をブンブンと横に振りながら手を胸の前でギュッと握り叫んだ。

 やだ。何その仕草?可愛すぎ。

 まあ、確かにリンネの声はソラネの萌えボイスとは違う可愛さだ。だが、電波ソングを歌うのは萌えボイスの声優や歌手だけじゃない。リンネのような少年系の可愛さを持つ歌手も多く電波ソングを歌っている。電波ソングと少年系ボイスは相性が良いのだ。

 「なあヒトマサ?」

 「なんだ?」

 「電波ソングに最高の萌えボイスと最高のショタボイスが合わさればどうなる?」

 「それはもちろん!最高の電波ソングになる!」

 雅人は拳を固く握り力強く答えた。

 さすが雅人。わかってるじゃないか!

 ソラネの出す萌え声は少女系ボイス、いわゆるロリボイスではなく一般的に甘い声と称されるもので、脳がとろけるという表現が一番しっくり来る声だ。それにリンネの天性の少年系ボイス、いわゆるショタボイスが重なれば文句なしの電波ソングが出来上がる!

 「頼むよソラネ!リンネ!お前達の力が必要なんだ!」

 「でもな……」

 「ぼ、僕が電波ソング……」

 くそう……。これでもまだダメか。

 「ねえ~?私じゃダメなのー?私もああいう声出せるよー?」

 「今は黙っててくださいね」

 「あれー?なんかひどくないー?」

 今は会長に構っている暇ではない。なんとしてもこのふたりを説得しなければならないのだ。

 しかし、本当にこのままではやばい。……しょうがない。お願い事をする上での最終手段を使わせてもらおう。

 「……今回の件を引き受けてくれたら何か一つ願いを聞くよ」

 「……本当か?」

 「師匠に二言はありませんよね?」

 あれ?なんかこれ地雷だった?思いっきり踏み抜いちゃった系?

 二人の目から先程までの不安や恥ずかしさというものが一切なくなってしまった。しかし、一度言ってしまったことをナシにしてしまうなんてことはできない。

 「お、おう!お願い事をひとつ聞こう!」

 「それはリアルでもいいんだな?」

 「え?それって、もしかしてリアルで俺と会うってこと?」

 「そういうことだ」

 「いやいやいや!MSL内ならまだしもリアルでなんて!自分の立場わかってるの!?」

 「わかっている。だが、私はそれを望むぞ?願いを聞いてくれると言ったよな?」

 おいおい……。マジで言ってるよこの人。目が本気だもん。

 そ、そうだ!リンネは反対してくれるはず!

 「……僕もおねえちゃんの意見に賛成です」

 やだ。何この子、天使?あー!こうなりゃヤケだ!

 「わかったよ!もうどんとこいよ!その代わり!リアルの俺を見て幻滅するなよ!イケメンでもなんでもないからな!ただの音楽好き野郎だからな!」

 「イケメンとかそんなのは関係ない。もとよりラクにそんなのは求めてない」

 「そうですね」

 いや、いくら俺でもそう言われてしまうと落ち込んでしまいますよ?リンネもすごい勢いで頷いてるし。

 「ん?話終わった?」

 「ヒトマサ。お前は他人事か」

 「他人事ではないけど俺が入る場面じゃないよな」

 まあ、確かにそうなんだが。だからって楽器の取引をここでしないでくれますかね?いつの間にかケイトの目が商売人の目になってるし。

 「まあ、とにかく話もついたしよろしく頼むよ。二人共」

 「了承したからにはやるだけやってみよう」

 「うぅ……。頑張ります……」

 はぁ……。大丈夫かな……。

 

どうもりょうさんでございます!毎日暑いですね!皆さん夏バテには充分お気をつけくださいね!投稿が少し遅れたような気がします。いえ、遅れましたね。すみません!次からはもっと頑張ります!

それではまた次回お会いしましょうね!

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