協力者会談
どうしてこうなった……。
「ほう?君が四人目の協力者か」
「そうだよー?あなたがソラネさんだねー?」
ソラネの国内にあるそれなりの宿屋の一室。そこには俺やリンネをはじめとするアッキー討伐組の連中が集まっていた。
そこまではいい。
なんで会長とソラネが会うなりにらみ合ってるんだよおおお!怖くて入り込めねえじゃねえか!
「えっと、君達がリンネさんとケイトさんだな?」
「そうですよ。よろしくお願いしますヒトマサさん!」
「よろしく。君がラクの親友なんだね?」
「そうだよ。よろしく二人共」
こっちはこっちで仲良くやってるし!リンネさん?ソラネを止められそうなのはリンネしかいないんだから止めてよ!てか、明らかに目をそらすのはやめようか?
「あ、あの……。二人共?話を進めたいんだけど……」
「ラク?少し黙っていてくれ。私はこの子とお話があるんだ」
「ラク君~?もう少し待ってねー?お姉さんこの子とお話というかあれだからー」
「は、はい……」
なんとか止めようとしたのだが二人の笑顔にただただ頷くことしかできなかった。
なんだよあれって……。それにソラネ?リアルでもそんな喋り方だから違和感無かったけど、初めて会ったときそんな喋り方じゃなかったよね?いや、今更だけど……。
どうして協力者が集まったのか。それは雅人の協力を得た直後のことだった。
「話は大体わかったけどさ。他の協力者のこと俺見たこともないし喋ったこともないよ?一度顔合わせとかしといたほうがいいんじゃない?」
事情を説明し終えると雅人はそんなことを言い出した。
確かにそうだ。リンネとソラネは当然面識はある。しかし、ケイトとソラネは面識はないし雅人なんてもってのほかだ。そういうこともあり顔合わせは必要だろう。協力者同士が顔を知らないなんてことはあってはならない。まあ、知るのはアバターだろうけど。
「そうだな。みんなの都合を聞いて一度顔合わせをしよう」
とまあそんなことがありこの場を設けたのだ。
それがまさかこんなことになるとは思わなかった……。未だに二人は妙な笑顔を浮かべながら牽制しあっている。
「まあまあ二人共。少し落ち着きなよ」
俺が何度目かわからないため息を吐きそうになったとき意外なやつから声が上がった。
「ヒトマサ君と言ったかい?ラクの親友か何かは知らんが口を出さないで欲しい」
「そうだよーヒトマサ君。邪魔だよー?」
二人は笑顔を崩さずこの世界ではヒトマサと名乗っている雅人を睨む。
「だから落ち着けって。二人はここに何をしに来たんだ?喧嘩するためか?そうなら場を乱す行為とみなすしかないぞ?少なくとも俺はラクを助けるためにここに来た。そうじゃないならはっきり言って邪魔だ」
雅人は二人の睨みに臆することなくそう言い放った。
こいつは時々こうなるから侮れないんだよな。
普段のおちゃらけた雰囲気なんてそこにはない。まるで吹雪のような冷たい雅人がそこに居た。
「……すまない。少し熱くなりすぎてしまったようだ」
「ごめんなさい……」
「わかればいいんだよ」
雅人さんぱねえ!あの二人が一瞬でおとなしくなりやがった!今度から二人が同じような雰囲気になったら雅人を連れてこよう。
「まあ、二人共思うところがあるのかもしれないけど今回の目的は顔合わせだから。ひとまずは抑えてくれ」
「すまないラク」
「ごめんね」
最後に俺が釘を刺しておく。
ひとまず二人共落ち着いたようだ。俺の言葉もすんなり受け入れ謝罪の言葉を述べてくれた。しょんぼりとした二人が少し気の毒にも思えたがしょうがないことだろう。
「それじゃ気を取り直して自己紹介でもしていこうか!」
「よし!一通り自己紹介も済んだな!」
「そうだな!いやー!ラクの知り合いには驚きを隠せないぜ!」
あのあと一人ずつ自己紹介をして顔合わせはひとまず終了した。
「超人気アイドルにその従姉妹、更にはうちの大人気生徒会長まで。幅広すぎじゃないか?」
「ははは……。自分でもびっくりしてるよ」
「それでラク。これからの方針はどうするつもりなんだ?」
和やかな雰囲気を少し締めるようにソラネが問う。
「そうだな……」
一応プランは立ててある。このメンバーなら実行もできる。しかし、確実ではない。でも、やるしかないんだよな。
「外堀から埋めていく」
「外堀?」
「なるほど。いきなりアッキーと直接対決するのではなく周りの街から落としていくわけですね?」
「さすがリンネ。正解だ」
この方法ならあわよくば協力者を得ることもできる。こちらが信頼するに値する者がいればだが……。
「アッキーの国はいくつかの街ごとに守護がついている。その守護者も相当な実力を持ってるらしい。そこを落としていき徐々に相手の勢いを削ぐ。国内でも相当な実力を持っている守護者が負けたとなればあちら側の士気も下がるだろう」
「でもラク。それでは時間がかかってしまうぞ?」
「もともと時間制限があるわけじゃないんだ。俺はいつか乗っ取ってやるって言ったんだ。明確な時間や期間を定めているわけじゃない、気長にやればいいさ」
まあ、それだけ肩身の狭いMSLライフを送ることになるけどな。まあでも……。
「音楽をやることには変わりないんだ。だったら、やることは一つ。音楽を楽しむだけだ」
俺がそう言うと他の五人はため息を吐き苦笑いを浮かべた。
「なんともラクらしい考えだな。いいだろう!私達もラクの言うとおり音楽を楽しむとしようじゃないか!」
「そうだねー。ここにいるのは音楽バカばっかだもんねー」
「僕は師匠についていきます!」
「もともと俺はそのつもりだし?」
「楽器のことなら任せてくれ!楽器が必要なら店閉めてでも君達を優先するよ!」
こうして俺達の方針は決まった。
やってやろうじゃないか!待ってろイケメンクソ野郎。お前の国乗っ取ってやるからな!
「さてラク。まずはどこを攻める?」
「……ここだ」
俺はマップを起動しある地点を指差す。
「ここの守護者は……」
「うおおおおおおおおおお!」
「L・O・V・E!リノにゃーん!」
「リノにゃんマジ天使!マジ愛してるー!」
轟く男達の歓声。湧き上がる熱気。そして……。
「みんな~!いつも応援ありがとにゃ~ん!今度はお店にもあそびにきてにゃ~!」
「うおおおおおおおおおおおおおおお!」
どこから出ているのかわからない声。猫耳、尻尾、メイド服の三コンボ。
「そう、相手はメイドカフェ発のMSL内限定アイドル。リノにゃんだ」
「これは……」
未だピンクのサイリウムが揺れる会場の最後尾。お揃いのローブを羽織った六人は唖然としていた。目の前の異様な光景と熱気にリンネは撃沈寸前だ。なんとか俺のローブにしがみついて立っている。
こらリンネ。そんなに引っ張るとローブが脱げちゃうでしょうが。でも、なんかグッドだよ!
そんなことはどうでもよくて、いやよくないけど今は置いておく。
「メイドカフェの聖地秋葉原に本店を構え、西の秋葉原と呼ばれる大阪日本橋にも系列店を持つ超人気メイド喫茶において三年連続人気ナンバーワンを獲得している伝説のメイド。それがリノにゃん。今回の相手だよ」
「厄介だな……」
ソラネは険しい顔でステージを見つめながら呟いた。
随分方向性は違えど同じアイドル。ソラネもなにか思う所があるのだろう。
「それにしてもラク君よく知ってるねー?」
「調べましたから」
「ふーん。メイドのことを調べたんだー?ふーん」
会長の目が怖い。なんで?俺なんか変なこと言った?
そりゃ相手のことは調べるでしょうよ。情報は大切だよ?なんでリンネやケイトまでそんな目をしてるの?てかリンネローブを引っ張る強さを強めないでくれ、本当に脱げる。
「え、えっと……」
「ラク。勝機はあるのか?相手のファンは凄まじいぞ。あのファンを食わなければいけないのだろう?できるのか?」
「あ、ああ!できる!できるとも!」
「自信があるんだな」
「ああ。今回の鍵はソラネ。お前だ」
「……私?」
そう、今回のバトルはソラネに掛かっている。
悪いがソラネ。お前の過去を少し探らせてもらったよ……。
どうもりょうさんでございます!皆さんお元気ですか?僕はお元気です!
はい、ということで割と早めに投稿できたような感じです!物語はついにバトルへと移っていきます!そして暴かれるソラネの過去とはー!?次回以降をお楽しみに!




